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2007年4月10日 (火)

ローマと全世界へ

復活の主日の正午、教皇様は恒例の「Urbi et Orbi(ローマと全世界へ)」と呼び習わされているメッセージを読み上げられ、世界に向けて使徒的祝福をなさいました。教皇様の言葉には、時として非常に重要な政治的メッセージが込められていることがありますが、今回のメッセージは特に重要な意味を持っていたのではないかと思います。そのメッセージとは、ジンバブエのムガベ大統領に直接向けられたものです。

教皇様は、世界で頻発する災害や戦争の犠牲者たちについて言及する中で、次のように言われました。「ジンバブエは深刻な危機に苦しんでいます。そのためジンバブエの司教団は最近の文書で、事態を乗り越えるための唯一の道は、祈りと共通善のための共通の取り組みであると述べています。」

ジンバブエはかつてローデシアと呼ばれ、白人優位主義で知られた国家でした。国際社会からの激しい批判と内戦とも言える状況を経て、黒人にも国民としての権利が認められ、総選挙を経て1980年3月に黒人による国家ジンバブエとして再出発したのです。その初代の首相がロバート・ムガベです。ムガベ氏はその後1987年に大統領制に移行して自らが大統領となり、現時点でもその座についています。当初はアフリカの力強いリーダーとして注目を浴びたムガベ大統領でしたが、そのうちに徹底的な白人排斥政策をとり、特に近年は旧宗主国であるイギリスの過去の植民地支配を徹底的に追求するという政策を採り続けています。そのため国内では一定の支持を得ているものの、アフリカ以外の国際社会では厄介者扱いを受けていると言っても良いでしょう。

国内的には経済が壊滅状態にあるようで、ある資料では昨年あたりはインフレ率が1500%を超えていたとか。ちょっと想像も出来ません。共産政権が崩壊した直後のロシア的状況です。こうなると国内的には貧富の格差が激しく広がり、国民の不満が鬱積していたのですが、そこに2008年の大統領選挙が近づいてきたのです。もう対外的に奇行の多いムガベはたくさんだと、野党側の反政府運動も激しさを増しているのです。それに対してムガベ政権がとっているのは、警察などによる反政府運動の押さえ込みで、国際社会からは人権侵害への批判が高まっていました。

ジンバブエは約1200万の国民の一割がカトリック、全体では3割がクリスチャンといわれる国です。その国で働く8教区9人のカトリック司教団は、受難の主日にメッセージを発表しました。「主は圧迫されるものの声を聞かれる」と題されたこのメッセージで、司教団は現政権による人権侵害や富の富裕層への集中を批判し、ムガベ大統領の退陣や新しい憲法の制定を求めています。そして仮に政権側が聞く耳を持たない場合には、非暴力に徹するものの、司教団が先頭に立って全国的な抗議運動を展開すると警告しています。

この一連の司教団の行動を、教皇様は復活のメッセージにわざわざ取り上げることによって、バチカンが同意していることを内外に示したのです。教皇様は単にジンバブエの状況を嘆くのではなく、わざわざジンバブエの司教団が「文書」を出したことに触れ、しかも「祈りと共通善のための共通の取り組み」、すなわち全国的な抗議運動の展開が唯一の道であると司教団が考えたことを肯定しました。

ムガベ大統領は(一応は)熱心なカトリックです。彼の最初の婦人、サリー・ムガベはガーナ人でしたが、彼女も熱心なカトリック信徒でした。92年にサリー・ムガベが亡くなったとき、ガーナのタコラディ司教座聖堂で葬儀ミサが行われ、ムガベ大統領が参加されたのを憶えています。司教団のメッセージと、それを肯定した教皇様の声が、果たしてムガベ大統領には届くのでしょうか。

(なおサリー・ムガベの関係で、以前からムガベ大統領はガーナ政府と近いとも言われ、ガーナ政府がどのようにジンバブエに働きかけるのかも注目されるところだと思います。)

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