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2015年2月 8日 (日)

『いこい、安らぎ』は教会共同体にこそ

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先日もお知らせしましたが、教皇様は今年正月の世界平和の日のメッセージに込められたテーマに基づき、奉献生活の年である今年の行事の一つとして、本日2月8日の日曜日を、『世界反人身売買、祈りと黙想と行動の日」と定められました。

主日と重なったので今日は祝われてはいませんが、2月8日はスーダン出身の聖ジョゼッピーナ・バキタの祝日です。彼女は1869年にスーダンのダルフールで生まれ、1876年、まだ幼い頃に奴隷として売買され、様々な体験の後イタリアにおいて1889年に自由の身となり、洗礼を受けた後にカノッサ会の修道女になりました。1947年に亡くなった彼女は、2000年に列聖されています。カノッサ会のホームページに聖バキタの次の言葉が紹介されていました。

『人々は私の過去の話を聞くと、「かわいそう!かわいそう!」と言います。でも、もっとかわいそうなのは神を知らない人です』

聖バキタの人生に象徴されているように、現代の世界において、人間的な尊厳を奪われ、自由意思を否定され、理不尽さのうちに囚われの身にあるすべての人のために、またそういった状況の中で生命の危険にさらされている人たちのために、教皇様は祈ること、その事実を知ること、そして行動することを世界平和の日のメッセージで呼びかけられました。

今日は、カテドラルである新潟教会の9時半のミサを、この意向で捧げさせていただきました。ちょうど主任のラウル師が休暇で不在でしたので、久しぶりに新潟教会の主祭壇でひとりでミサを捧げましたが、新潟教会には侍者をしてくださる青年から壮年のグループがあって、写真のごとく侍者に支えられて落ち着いたミサを捧げることが出来ました。

今回の日本人を巻き込んだ残虐な事件も心に留めながら、今日の祈りを捧げました。また新潟と言えば隣国による国家的犯罪の拉致問題もありますし、加えて問題は日本人が巻き込まれた特定の事件だけに限るものではなく、教皇様が指摘されているように、様々な形態をとって世界中に現存しています。その意味で、日本社会も、つまり私たちも無関係な問題ではありません。今回日本人が巻き込まれた国際テロ事件が発生したことで、私たちは現代の奴隷制、人身売買の一端に触れることになりました。そこに留まってしまうのではなく、その先にさらに人類全体の問題として、人間の自由意思を奪い、理不尽な状況のうちに閉じ込め、生命を危険にさらす様々な問題が存在していることに心を留めていきましょう。

教皇様の正月の世界平和の日のメッセージは、このリンクから読むことが出来ます。

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またそのうち詳しく書きますが、昨日東京で行われたHIV/AIDSデスク主催の研修会で、講師の方が、「知識を正しく広めてそれを知っていれば問題は解決すると思ったが、そうではなかった。人間は個人的な体験やつながりの中で、正しい方向へと進む決断をしていく。従っていまの状況の中で一番必要なのは、しっかりとしたリアルな人間関係を構築することだ」というようなポイントを言われたことが心に残りました。

確かにインターネットがこれだけ発達し、ありとあらゆる情報があふれている世界の中で、私は、多くの人が取捨選択が出来ずに正しい道を発見できずにいると思っていました。そうではなくて、実は豊富な知識それ自体は人を動かす動機になり得ない。知識の蓄積ではなくて、人は他者によって動機づけられて、初めてその知識を生かして行動しようと動機づけられる。豊富な知識があふれる中で、人はそれに埋没し、自分の周りにだけ居心地の良い世界を構築して、満足してしまっている。それが、たとえば他者の生命へのリアルな感情を失わせる原因となってしまっているのではないでしょうか。

生命を大事にしようと教会が世界に向かって呼びかけるのであれば、教会はその生命がリアルな存在であると言うことを肌で感じる場を提供しなくてはいけない。私は教会共同体にはその力があると思います。これだけ様々な年代の人が、様々な文化的背景の人が、そして右から左までありとあらゆる思想の人が、見事にそろって一緒に同じ神の方向を向いて祈っている共同体はそうはありません。この教会共同体の中に、本当に生きている人の交わりの世界があり、生命が息づいていることを、その交わりの中で感じる可能性があります。ああ教会に来て、生きていると感じることが出来る場を提供する力が、教会共同体にはあると思います。

簡単に言えば、教会には『いこい、安らぎ』がある。日曜日の午前中のほんの一時間ほどですが、様々な人と出会いともに祈るこの場にこそ、生命を真摯に生きる人々の交わりのうちに、心の安らぎが存在しています。

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