先日閉幕した国際カリタスの総会からの記事の続きです。
まず今回の総会中に選出された新しい総裁のお名前がはっきりしていなかったので、ここに記しておきます。ホンジュラスのテグシガルパ大司教のオスカル・アンドレス・ロドリゲス・マラディアガ枢機卿(65)で、サレジオ会会員です。2003年には政府関係の仕事で、来日されたこともあると、今回ローマでお会いした駐バチカンの上野景文大使から伺いました。上野大使はマラディアガ枢機卿とその際に面談もされているということで、枢機卿の人間性のすばらしさと政治力を高く評価されておりました(上野大使という方も、十分にユニークな外交官ではありましたが、それはいずれまた)。なおラテンアメリカ・カリブ司教協議会総会の閉会直後であったため、枢機卿はカリタス総会に参加はされませんでしたが、ビデオでメッセージを寄せてくださいました。
ところで今回の国際カリタスが世界に発信していることはなんでしょうか。それが端的に表現されているのが、最終日に採択されたメッセージです。原文は英語ですが、仮訳を作成しましたので掲載しておきます。(あくまでも仮の私訳で、正式な訳はカリタスジャパンから公表されると思います)
最終メッセージ 「協力すれば一人の努力は162倍になる」
162所属団体からの参加者によるカリタスの第18回総会は、バチカンにおいて、「神の愛のあかし人、平和の構築者」であり続けることを誓いながら閉幕した。参加者は、3秒に一人の子どもが貧困のために命を失うこの世界を変革するという、今すぐ取り組まなければならない使命を果たすという「具体的な行動」に、イエス・キリストにおける「生きた信仰」を注ぎ込む新たな力を得て帰途についた。
教皇ベネディクト16世は、草の根におけるカリタスの奉仕に感謝して、参加者に次のように語った。「あなた方の連盟は単に教会の代表として活動しているだけではなく、まさしく教会の一部分であり、教会活動の様々なレベルで行われる恵みのやりとりに心から参加しているのです。」
「グローバリズムや人権侵害、不公平な社会構造といった、現代において世界が直面している最大の挑戦に対しては、人間のもっとも痛切な必要、すなわち、人間の尊厳や幸福をもたらし、そして究極的には永遠の救いをもたらすということをしっかりと捉えていない限りは、対峙することも乗り越えることも出来ません。」
「ポプロールム・プログレッシオ」の発布40周年、回勅「神は愛」、そして今総会におけるレナート・マルティノ枢機卿の演説などに促されて、参加者は地球規模の連帯を目指して、単に小道を切り開くのではなく、スーパーハイウェーを造ることで一致した。参加者は、出来る限り早くその目的を達成することを望んでいる。
カリタスは人道的援助や総合的人間開発、持続的平和の構築を、このプロジェクトの中心に据える。それはバラバラになった数々の働きなのではなく、一つのプログラムのそれぞれの部分としての働きであって、それが貧しい人たちが自らの人生を変革することを助けることになる。参加者は、このプログラムの実践において、一つのまとまった組織として行動することが、単独のカリタス団体の影響力を162倍にすることが可能だということを理解して帰途についた。一致と補完性は、対立する主張ではない。
私たちのこの野心的な計画を成し遂げるために、加盟団体は、調整と政策提言、コミュニケーションのための手段が整えられるように、ふさわしい資金提供をすることに同意した。カリタスの加盟団体は、継続する悲劇である貧困のスキャンダルに立ち向かう力として、その可能性を最大に引き出すために、ネットワークをさらに専門職にふさわしいものとし続けることを希望する。
今、世界では30を超える戦争が引き起こされている。今、ダルフール、イラク、コロンビア、ウガンダ北部、スリランカ、コンゴ民主共和国、そしてそのほか紛争が存在する多くの地域で罪のない人たちが苦しんでいる。今、30億を超える人々が一日二ドル以下で生活している。今、4千万を超える人々が、HIV/AIDSと共に生きている。将来のために、2004年ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイ女史は、カリタス加盟団体に対して、貧しい共同体に対する気候変動による危機に対応するようにと求めた。マータイ女史によれば、カリタスは、草の根レベルにおいて貧しい人たちに力を与える事によって変革をもたらし、同時に世界的なレベルでCO2排出量削減を呼びかけるというユニークな位置にいるという。
総会は二つの世界的な出来事と時期を同じくした。聖地においては、イスラエルとアラブの6日戦争(第三次中東戦争)を人々はふり返った。カリタスは平和は可能であると宣言し、あらためて、占領の終結とあらゆる類の暴力の停止を求める。
ドイツのハイリゲンダムでは、過去の誓いにもかかわらず途上国への援助が減らされているという背景の中、G8のリーダーたちが会合を持った。カリタスは、あらためて、より良い援助を増加させることを求める。そのためにカリタスは、「Make Aide Work(援助を立て直せ)」という巨大なバナーをサンピエトロ広場で掲げた。この二つのサミットについて、カリタスの参加者は、そのうちの一つは約束を守ることを知りながら帰途についた。この地で私たちが決議した事柄は、貧しい人たちに持続した影響を持つだろう。もう一つのサミットは、十分な資金提供をもってその約束を守ることに失敗した。
カリタスはこれらの問題から目をそらすことはない。我々は発言を続けるだろう。200の国と地域で働き、6大陸から集まり、100を超える異なる言葉を話しているが、我々はバベルの塔ではない。「永遠の光は神ご自身である。太陽とそのほかの星を司る愛でもあるその光の前で(ダンテ「神曲」)」我々は声を一つにして、愛の武装をして、貧困のスキャンダルを終わらせることが出来ると宣言する。 (以上)
左下の写真は、最終メッセージにあるように、会期中にサンピエトロ広場で「Make Aid Work」のバナーを掲げる総会参加者。右下は教皇宮殿において総会参加者に語りかける教皇ベネディクト16世。なお総会参加者は今回のG8サミット主催者のメルケル首相宛にメッセージを送付しました。