ヨハネス23世のあの言葉から50年
現代におけるカトリック教会のあるべき姿を決定づけているのは、言うまでもなく1962年から65年の間に開催された第二バチカン公会議に他なりません。教皇ヨハネス23世が1961年12月25日に使徒憲章「フマーネ・サル-ティス」を発表され、公会議を召集されたのでした。私がまだ3歳の時です。
「フマーネ・サル-ティス」に記された、次の言葉が私の心にいつも響いています。
「現在、教会は人類社会が危機に直面していること、大きく変動していることを知っている。人類が新時代への転機に立っている現在、これまでの転換期にそうであったように、教会の任務は重い。教会は現代世界の血管に、福音の永遠の力、世界を生かす神の力を送りこまなければならない」
それから40数年が経過した今、果たして教会は「現代世界の血管」に「世界を活かす神の力」を送り込むことに成功しているのか、顧みなければならないと常に感じています。
さてヨハネス23世は、1961年12月25日に、唐突にこの文書を発表して公会議を召集したわけではありません。実は教皇に就任して3ヶ月しかたっていないときに、公会議召集の意向を示されたのです。それが1959年1月25日でした。すなわち、今年の1月25日は、教皇ヨハネス23世が第二バチカン公会議を召集するという意向を明示されてから50周年だったのです。そしてその場所は、ローマの聖パウロ大聖堂でした。
今年の1月25日、教皇ベネディクト16世はその同じ聖パウロ大聖堂に於いて晩の祈りを行いました。聖パウロの回心とともに、キリスト教一致祈祷週間を締めくくるための祈りの集いでした。その中で説教された教皇様は、最後の部分でこのヨハネス23世による公会議召集の意向発表の出来事を、「ここにいる私たち年輩のものは、確実に忘れる事はない出来事」と形容して、特にエキュメニズムに関連してコメントを述べられれました。教皇様はヨハネス23世の公会議を開催するという決断は、「聖霊の働きによる摂理的決断」であり、その後のエキュメニズム運動の基礎を築きあげたと述べ、困難はあるけれども「完全な一致の地平は、まだ私たちに開かれている」との希望を示されました。
教会の長い歴史、そして神の目における時間の流れから考えれば、50年というのはあっという間に過ぎません。第二バチカン公会議の歴史はまだ始まったばかりで、すべてが完全に実現しているわけではありません。未だに試行錯誤が続いている分野も少なくありません。残念ながら人間の時間は限られているため、どうしても結果が見たいと焦ってしまうのかもしれません。神の時間の流れの中に第二バチカン公会議の実りを委ねる事ができるかどうか、それはすなわち、「聖霊の働きによる摂理的な決断」に身を委ねる信仰があるかどうかと言うことではないかと思います。(写真は聖パウロ大聖堂)
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