大震災三年にあたっての司教協議会会長談話など
東日本大震災が発生してからまもなく3年となります。日本のカトリック教会は、被災地をほぼカバーする仙台教区の復興支援をこの三年間、いわゆる『オールジャパン体制』で実施してきました。震災直後の3月16日に、私と谷司教、そしてカリタスジャパンの担当者が山形市から雪の峠を越えて仙台に入り、平賀司教と小松神父と相談をして仙台教区サポートセンターを立ち上げ、その日から全国の教会をあげての被災地支援が始まりました。カリタスジャパンは国内外からの多くの方の募金を頂き、長期的な復興支援が可能となるように毎年の計画を立て、仙台教区内で展開しているカトリック教会の被災者支援活動を支えています。
先日の司教総会では、すでにお知らせした通り、この『オールジャパン体制』をさらに三年継続することが決議されました。日本のカトリック教会は、仙台教区内で展開している復興支援活動を、これからも続けていきますし、カリタスジャパンも支援を継続していきます。
もちろん、復興の主役はその地に住んでいる方々ですから、この教会の活動が決して活動の継続のための活動になってはいけません。いつかは終結させなければなりません。しかし、教会は、震災の前から仙台教区の各地にあり、震災の時を共に過ごし、そしてこれからも仙台教区の各地に存在するのですから、その意味で、カトリック教会としての復興支援活動が終わるということはありません。教会は一緒になって復興の道を歩んでいくのです。
多くの方が被災地にボランティアとして出かけて行かれました。様々な形で支援活動を続けておられる方が、全国の教会にはおられます。現地に行くことができずに、忸怩たる思いでおられる方も少なくないでしょう。実は私もその一人です。震災が発生した時は、ちょうど、新潟と札幌教区を兼任していた時でしたし、同じ頃にカリタスアジアの責任者にも選出されていました。それに加えて、カリタスジャパンの責任者でもあり、震災直後には司教団の復興支援担当にもなりました。いきおい、各地で会議が相次ぎ、現地入りする時間がほとんどとれませんでした。同時に、これまでのカリタスジャパンでの海外援助担当の経験から言えるのは、具体的な支援活動には前線での役割と後方での役割がどちらも不可欠であるということ。やはりそれぞれには役割が与えられています。体力、年齢、時間の制約で、現地入りできない方々にも、是非それぞれの役割を見いだして頂ければと思います。もちろんキリスト者として、祈りで支えることが第一。次に被災各地の情報にアンテナを広げてよく触れていくこと。そこからすべては始まるようにも思います。
司教団の復興支援担当は、全国の教会から仙台教区へ関わろうとする様々なイニシアチブの調整役と情報交換の場を生み出してきました。実際の仕事は、補佐である大阪教区の神田神父と同教区職員の濱口氏が担ってくれています。このお二人の力がなければ、『オールジャパン体制』は継続できなかったことでしょう。現在は、当初はカリタスジャパンの秘書であった神言会の成井神父も、修道会の任務でしばしば海外におられますが、その合間を縫って、復興支援担当の一員として活躍してくれています。なおカリタスジャパンからは三年目の活動報告書が、日本語と英語で発表されています。このリンクからダウンロードすることができますので、是非一度ご覧ください。カリタスジャパンにとっては、国内でこのように大規模な災害復興支援活動を行うのは初めての経験です。被災者の方々に渡される一度限りの義援金集めではなく、長期にわたって、被災地の共同体が復興するための活動を支援するというプログラムのために、多くの方の支援を頂いていることに感謝申し上げます。さらに3年、側面支援を継続します。
司教団は3月10日の午後6時から、仙台教区のカテドラルである元寺小路教会で、ミサをささげます。お時間のある方はどうぞご一緒ください。
また大震災三年目にあたり、司教団の決意を表明した司教協議会会長談話が発表されています。現在の会長は東京教区の岡田大司教です。こちらのリンクから全文をどうぞ。
談話の中にこういう部分があります。
「被災地を統括する仙台教区のサポートセンターを中心に沿岸部各地にボランティアベースを設置し、全国から駆けつけるボランティアと共に活動をしております。また日本の三教会管区(東京・大阪・長崎)も、それぞれ被災地域に拠点を設置し、仙台教区の復興支援活動を全国的規模で展開しております」
この文章にある通り、まず第一に仙台教区が中心になって、全国のボランティアの方々と活動を続けているのであり、そこに三教会管区が拠点を設けて、仙台教区を支援しているのです。 岩手県から福島県の各地で展開しているそのほかの教区が主宰する活動は、それぞれが勝手に行っているのではなく、あくまでも仙台教区という教会共同体の役割を補完するために行われていることを、私たちは心に留めておきたいと思います。
もう一つ談話の最後に重要な指摘があります。
「わたしたちはその中で、神の賜物であるいのちを守る信仰者の立場から、原発の即時廃止を呼びかけ、同時に「何よりも神から求められる生き方、つまり『単純質素な生活、祈りの精神、すべての人々に対する愛、とくに小さく貧しい人々への愛、従順、謙遜、離脱、自己犠牲』などによって、福音の真正なあかしを立てる務め」の重要性を説き、社会のあり方の見直しを提言しました」
福島の原発事故をうけて、司教団は信仰者としての倫理的立場から、日本社会の進むべき方向性を明確に示したつもりでおりました。もちろん、原発の即時廃止には様々な現実的利害をはじめ解決すべき課題、そして技術的挑戦が多々あることは重々承知しています。しかし基本的な方向性は原発の廃止だと考えているのです。そしてそれは、私たちの生活自体を信仰の立場から見直す必要性があることをも司教団メッセージは指摘していました。そこに手をつけずに、代替エネルギーをどうするのかという議論をしても、結局は何も変わりません。そして会長談話が指摘する通り、残念ながらあの司教団メッセージの願いは現実化する方向からだんだんと乖離していくように思われます。
新潟教区では、3月9日の日曜日のミサを、被災者の方々のため、復興のため、そして亡くなられた方々のためにささげましょう。
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