司教のための社会問題研修会@福島
毎年寒い時期に恒例となっている社会司教委員会主催の司教のための社会問題の勉強会が、12月16日午後から12月18日昼過ぎまで、福島県内で開催されました。この三日間、福島市内は大雪でした。
この勉強会は、社会司教委員会(カリタスジャパンや難民移住移動者委員会や正義と平和協議会等々の社会福音化推進部に置かれている委員会などの責任・担当司教がメンバー)が毎年開催していますが、基本的にはその時々に重要だと思われる社会問題に関して現地学習会を行ってきました。対象は全司教ですが、仕事の都合で参加できない方もおられ、それでも今回は11名の司教の参加となりました。
そして今年のテーマは「福島」。東京教区ボランティアセンター(CTVC)が、震災後の復興支援活動として、主にこの福島県内で活動し、また沿岸北部の原町にボランティアベースを開設していますし、福島県内の小教区やそのほかの団体も、積極的に活動してきています。今回は主にCTVCのメンバーと、仙台教区が福島市内に設置した福島デスクの責任者や福島の松木町教会の支援グループの方々からお話を聞くとともに、実際にバスに乗って原町ベースへ出かけ、さらには福島第一原発近くの帰還困難区域にも足を伸ばしました。今年の9月15日に、この帰還困難区域を南北に通過する国道6号線の通行規制が解除されました。これまでは南のいわき市方面から北の浪江町方面へは直接抜けることが出来なかったのですが、それが可能になっています。ただし、線量が高いため、窓を閉め切った車の通過のみが認められていて、自転車やバイク、歩行者は通行禁止。さらに通ることが出来るのは国道6号線のみで、そこから分かれる道路は勿論、国道に面する家屋にはすべてバリケードが設置されていました。(写真上、双葉町にて。帰還困難区域を遮断するバリケード)
福島第一原発で作業を続ける方々の拠点となっているJビレッジや、富岡の駅まで足を伸ばし、その後「避難指示解除準備区域」となっている南相馬市の小高区にある同慶寺にて住職を始め二人の方からお話を伺いました。ここは立ち入ることは出来るものの、宿泊が禁止されているので、住職は毎日通い、また定期的に檀家の人たちに呼びかけて清掃作業を行ってきているとのこと。お話しくださった二人とも、事故の遙か以前から原発の危うさを説いてきた方々でした。(写真上。双葉町内。有名になってしまった「原子力 明るい未来のエネルギー」の標語がゲートになっています)
事故後、福島に人が住むこと自体に対して様々な意見があることは承知しています。事故があったらこういうことになるのはわかっていたはずだと、ばっさりと切り捨てる意見もあります。当たり前のことですが、そこに住んでいる人の100%が諸手を挙げて原発立地に賛成していたわけでもなく、一刀両断にすべてを切り捨てる考えには与することは出来ません。線量が高く厳しいとはわかりながらも、普通のごとくに残っている故郷を目の前にして、そこに帰りたいと思う心持ちは当然のことではないでしょうか。理不尽にも家を奪われ、仮設の住宅で避難生活を強いられている人たちの心持ちを考えるとき、単純に、すべてを隔離して、住民はどこかに移住させればよいのだなどと考えることは出来ません。まして、幼い子供たちに忍び寄る目に見えない脅威への恐れは、それが目に見えないだけに、いくら大丈夫だと言われても、少しでも危険性があるのであればそれを避けたいと願う母親の心持ちもまた、当然のことではないでしょうか。厳しい経済的条件の中で、自主避難を続けている方々を切り捨てるようなことが許されてよいわけがありません。単純には決着をつけることが出来ない、複雑な住民の現実がそこにはあります。(写真上。富岡町のJR富岡駅のかつてのプラットホームにて。常磐線です)
このような大規模な事故になると、被害を受けた方も大多数に及ぶため、どうしても対応がおおざっぱになってしまいます。一人一人の気持ちよりも、平均値で物事が決まってしまう。でも被害を受けたのは一人一人なのですから、その心に寄り添う姿勢を止めてしまうわけには行きません。(写真上。双葉町にて、除染で出た廃棄物の山)
短い時間でしたが、いろいろと考えさせられる勉強会でした。三日目は、福島市内の野田町教会でミサを捧げ、終わりとなりました。今後のカトリック教会の全国からの支援を集約した復興支援活動のためにも、貴重な時間をいただきました。準備してくださった福島デスクとCTVCの皆様に感謝。
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