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2015年1月31日 (土)

清心中学3年静修と、仙台サポート会議

さて海外研修からの時差と、帰国したその日に痛めた喉の二つから回復するのに手間取りましたが、何とかなりました。

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先週の木曜日、29日は午後から新潟教会を会場に、新潟清心女子中学3年生の静修。卒業を前に、一日心を落ち着けて、祈りのうちに人生の振り返りをする特別な日です。午後1時から、新潟カトリックセンター二階ホールで、40分ほどお話をさせていただきました。

この中3は昨年末のクリスマス会で、静止聖劇『タブロー』を披露してくれた学年ですが、そのときの主要テーマは『児童問題』。鋭い視点から、新鮮で刺激のある聖劇を見せてくれた学年です。『児童問題』の根底にあるのは、もちろん世界の貧困問題です。そこで、カリタスジャパンが国際カリタスとともにすすめている貧困撲滅キャンペーンについて、お話をさせていただきました。話の後は、生徒たちによる分かち合い。世界の現実を前に、単純に白黒つける情報に流されずに、複雑に絡み合った現実をじっくりと読み解き、人類に共通の善を実現する世界を生み出す努力を続けていってほしいと思います。

貧困問題へのカトリック教会の取り組みの根底は、もちろん神の被造物である一つ一つの生命が等しく尊厳のある生き方が出来る世界の実現ですが、ただしそれは、一般に言う『平等』とは異なっています。教会の発展への考えを一番端的に表しているのは、教皇聖ヨハネパウロ2世の次の言葉でしょう。

「発展とは、富める国が現在享受している生活水準にすべての人を引き上げることではなく、労働を結集してよりふさわしい生活を築き上げること、個々人の尊厳と創造性、そして天職、すなわち神の召し出しにこたえる力を具体的に高めることなのです。(回勅「新しい課題」29)」

神の個々人への『召し出し』の実現を妨げている社会の現実を是正していくことが、貧困撲滅の重要な課題のひとつです。先日の海外研修でのマルクス枢機卿の講演の中にもあったのですが、教皇フランシスコの率いる教会が、世界の現在の主流である経済システムに対して批判的であることから、『共産主義者だ』と批判を受けているが、そうではない。それは資本主義の否定ではなく、いわば『エセ資本主義』の否定であり、教皇フランシスコは『資本主義』を超越したその先にあるシステムを語っている。その目指す先が、この聖ヨハネパウロ2世の言葉に表されているように思います。

もとより、教会と共産主義は、神を信じるものと、神を否定するものとで根本から相容れるところではありませんし、具体的にめざす方向性で共通点があったとしても、根本で一致することは困難です。ですから、教会の現状批判の姿勢に対して、『共産主義者だ』と指弾することは、感情に訴えるだけで、それほど理に適ったことではありません。

現在の『資本主義』を超えたところに教会が求める基準は、これまた次の聖ヨハネパウロ2世の言葉に、端的に記されている連帯を実現する姿勢に導かれた世界の実現であろうと思います。

「新しい『愛の創造力』の時代です。それはただ単に、効果的な援助提供の中に見られるだけでなく、隣人になる能力、苦しむ人と連帯する能力のうちにも見られる創造力であり、辱めを感じさせるような施しではなく、兄弟姉妹としての分かち合いです。(使徒的書簡「新千年期の始めに」50)」

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お話と分かち合いの後、校長先生のお話があり、そして新潟教会聖堂に移って感謝ミサを捧げました。インフルエンザがはやっているため、数名の欠席者がありました。元々この学年は人数が少なく、欠席者もあったため、21名ほどの参加でした。

その日の夜に仙台へ移動。金曜日の午前10時から、仙台の教区本部で、復興支援の会議でした。10時からはボランティアベースなどの担当者が集まって意見交換をする、全ベース会議。今回が19回目とのこと。私など司教は、オブザーバーとして後ろに陣取り、各ベースの現状と課題について聞かせていただきました。

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そして午後1時からは、定例の仙台教区サポート会議。今回で32回目の開催です。カリタスジャパンが国内外からいただいた募金は、仙台教区内のボランティアベースなどを通じた被災者支援活動のために使われています。以前にも記したように、昨年11月の段階で、国内から約8.5億円、国際カリタスから11.2億円の募金を受領し、これまでのほぼ4年間でそのうちから15.2億円ほどを支出しました。『義援金』であるならば、一刻も早く、すべてを被災者に配分するのでしょうが、この募金は、被災者の方々の復興を支援するためのものですから、短期に終わらず、長期に渡って歩みをともにし支えていくために活用します。被災地各地に設けられているボランティアベースによる、たとえば仮設訪問やカフェの運営など、地元の社会福祉協議会や自治会との連携の中で行われる支援活動は、まだまだ継続が必要です。そのために計画性をもって、募金を活用していかなくてはなりません。

昨日の会議では、仙台教区から、いまのような支援活動は、少なくとも震災発生10年までは続けたいという意思表示がありました。ですから今後どのような形で、各ボランティアベースの活動を展開していくのかが、昨日の会議の一番のテーマでありました。

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会議中から仙台は大雪。夕方、新潟へ帰るために仙台駅へ向かう頃は、町中が真っ白な雪に覆われておりました。

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2015年1月27日 (火)

海外で研修会参加

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先週は海外での司教研修会に参加していました。南米を中心に、アフリカやアジアの司教が約80名の参加。今回はガーナから大勢参加していましたので、いつも一番数の多い南米と比較して、アジアがとても少ない印象の会でした。某国のカトリック系シンクタンクの主催で、私は今回が三回目の参加で、日本からは私ひとりでした。

その研修会に出かけている間に、日本に対する凶悪なテロ行為が発生していました。拘束されている日本人お二人は、すでに昨年末くらいからは『イスラム国』とやら自称する過激派集団に拘束されていたようですが、身代金の要求と処刑の予告という最悪の展開になりました。そしてそのうちのお一人がすでに殺害されたのではないかと思わせる報道もあり、ご家族を始め関係者の方々の心痛は計り知れないものがあろうと思います。一刻も早い解決のためにお祈りいたします。またとらわれている方々の無事な解放のために、心から祈ります。

過激派集団は『イスラム』という宗教の名称を名乗っているものの、その実態は神を恐れ神の前に謙遜に生かされていると自覚する宗教者の行動とは全くかけ離れたものです。宗教の名の下に、神が与えられた生命をないがしろにする行動を、認めることは出来ません。ましてやこのような国際的なテロ行為は、全く関係のない個人を巻き込んで多くの方に恐怖を与え、身勝手な理由で生命を奪い、それをもって国家の体制に挑戦しようとするのですから、まさしく神の権威に正面から反する悪の行動です。テロ集団が日本を巻き込んだこの事件の先にいったい何を狙っているのかを見極めることも、神の秩序に満たされた世界を構築するために不可欠かと思います。

さて先週参加したその研修会のメインスピーカーは、ドイツのミュンヘン・フライジングの大司教ラインハルト・マルクス枢機卿でした。まだ61歳のマルクス枢機卿は、43歳で司教になり、57歳の時に枢機卿になった人物で、現在はドイツの司教協議会の会長。いわゆるC9、つまり教皇フランシスコの顧問枢機卿会のメンバー、さらに新設された経済評議会のメンバーでもあります。流ちょうな英語で、資本主義を超越したその先にある経済体制について、教皇フランシスコが何を目指しているのか、力強く語ってくれました。(上の写真のテーブル中央が、マルクス枢機卿)

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2015年1月19日 (月)

キリスト教一致祈祷週間

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毎年1月18日から25日までは、キリスト教一致祈祷週間とされ、世界中で様々な行事が行われます。今年のテーマは、「イエスは『水を飲ませてください』と言われた。」(ヨハネ4:7)とされ、すでに配布されていることと思いますが、カトリック中央協議会と日本キリスト教協議会が一緒になって作成したパンフレットが用意されています。毎年異なる国の出来事を紹介するパンフレットですが、今年はブラジルでの体験が紹介されています。

新潟市内では、以前からプロテスタント各派とカトリックで新潟市キリスト教連合教師会が構成されており、ここが主催して合同祈祷会を開催しています。以前は一致祈祷週間の毎日夜に持ち回りで行われていましたが、やはりどこも信徒の高齢化があり夜は難しということから、数年前から日中に行うことになっています。また毎日も難しいことから、4回の合同祈祷会の開催ともなっています。

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昨日は今年の一致祈祷週間の中心集会という位置づけで、日本キリスト教団新潟教会(営所通り)を会場に、午後2時から祈祷会が開催されました。私にとっては、プロテスタントの教会での礼拝に参加する数少ない機会です。カトリックからは私を含め司祭3名と信徒が10名ほど。全体でも50名を超えるくらいの参加者がありました。

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礼拝は同教会の牧師である神崎先生の司式で行われ、まず最初に各教会の代表者が前に出て、今年のテーマに沿って、コップの水を一つの大きな器に注ぎ込むというシンボル的なことから始まりました。神崎先生の説教は、長崎で過ごされた大学生時代の出会いを中心に、文化や国籍の違いを乗り越えて行動することの大切さを体験的にお話しくださいました。

二階の教会堂での祈祷会後は、一階のホールで茶話会。カトリックもプロテスタントも、少子高齢化の影響を激しく受けているのは事実ですが、それでも昨日は幼い子供たちが遊び回る声が聞こえたりして、ちょっと将来への希望を感じることが出来ました。

現実的に考えれば、異なる教派が一つの名称で合同し、一つの教会として存在することは、それぞれの教会に長い歴史の積み重ねができあがっている現在、非常に非現実的であろうと思います。しかしながら同じイエスを主キリストと信じ、同じ父を神とあがめ、同じ聖霊の働きを信じるものが、心において共有できるものがないほうが考えられません。同じ福音を信じているのですから、同じ方向を向いて、同じ価値観に支えられて、現実者会にその価値観をともに証ししていくという意味で、一致が推進されることを祈らざるを得ません。

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2015年1月17日 (土)

20年目の今日

阪神淡路大震災が発生してから今日で20年。各地で追悼の祈りが捧げられました。あの大震災で亡くなられた方々、またその後の震災に起因する様々な状況の中で亡くなられた方々の永遠の安息を、あらためてお祈りいたします。また慰めの源である神が、時間を積み重ねてもいえることのない悲しみにある多くの方々に、豊かな慰めを与えてくださるように、お祈り申し上げます。

あの日あのとき、どこで何をしていたかを克明に覚えている出来事は、人生の中にそれほどあるものではありません。しかし多くの方にとって、1995年1月17日の朝どこにいたかは、記憶にしっかりと刻まれていることでしょうし、同じように、2011年3月11日の午後も忘れることが出来ません。それほど衝撃的な出来事でしたし、その衝撃はいまでも消え去ることはありません。

いま、東日本大震災の復興の途上にある東北をはじめとし、日本の多くの方が体験されていることでしょうが、人知を遙かに超え、人間の力を凌駕する巨大な大自然の力の前で、その理由さえも解明できないまま、不条理に身をゆだねなければならないとき、私たちは沈黙のうちに祈ることの大切さを肌で感じさせられます。

教皇様はちょうど本日、2013年の巨大な台風で被害を受けた、フィリピンのレイテ島へ出かけられました。今日のレイテは、今年最初の台風が迫ってきており、ひどい荒天でした。でも教皇様は、今回の司牧訪問の一番の目的がこの地を訪れ、被災された方々とともに祈ることだからと、予定を短くしたものの、タクロバンで大雨と強風の中、ミサを捧げられました。動画をバチカンのYou Tubeサイトからリンクしておきます。

この中で教皇様は、英語で説教を始められ、即座に「スペイン語で話しても良いか」と集まった十数万の人たちに問いかけました。その後、通訳を交えてスペイン語で、原稿なしで説教されましたが、いつものどちらかというとか細いお話の仕方と異なり、とてもとても力強いお話でした。その日の朗読を解説し、「台風から14ヶ月後でもここに皆がしっかりと生きているのは、イエスによって守られていることを信仰において知っているからだ」と話された後に、次のように語りかけられました。

『ローマでこの災害について知ったとき、私はここに来なければならないと思った。その日、私はここを訪問することを決めていました。皆さんとともにいるためにここに来ました。少し遅かったかもしれないけど、でも来ました。イエスは主であると告げるために来ました。イエスは私たちを失望させることはありません。』

非常に厳しい天候の中で、レインコートを羽織ってのミサでしたから、非常に難しいミサであったと思います。でも教皇様は、悲しむ人、苦しむ人とともに歩む教会の姿を自ら示そうとなさっていることを実感させる、すばらしいミサでした。

ところで先ほど教皇様は、今年3月16日と17日に長崎で行われる『日本の信徒発見150周年』の記念行事に、ご自分の特使として、フィリピンのコタバト教区大司教、オランド・ケベド枢機卿を派遣すると発表されました。3月17日には大浦天主堂で日本の司教団もそろって教皇特使のケベド枢機卿と一緒にミサを捧げることになっています。

また、明日から一週間は、キリスト教一致祈祷週間です。各地で様々な行事や祈祷会が行われることかと思います。新潟市内の予定を記しておきます。

  • 1月18日 日本キリスト教団新潟教会(中心集会) 14:00
  • 1月20日 カトリック青山教会 10:30
  • 1月22日 日本キリスト教団信濃町教会 10:30
  • 1月24日 カトリック亀田教会 10:30

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2015年1月15日 (木)

『戦友』の死

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先日新潟を訪ねてくれた、神言会のマーティン・デュマス神父から、今朝方、残念な通知がありました。先日来体調を崩して入院していたデュマス神父のお父さんが、日本時間の昨晩、ガーナで亡くなられたと言うことです。どうぞお祈りください。

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デュマス神父のお父さん、ジョゼフ・クウェシ・デュマス氏(Joseph Kwesi Dumas)は、変な言い方ですが、私の大切な『戦友』でした。私がガーナのオソンソン(Osonson)教会で働いていた1987年から1994年の間、デュマス氏は教会のカテキストをつとめていました。もちろん当時のオソンソン教会には40人近いカテキストが在籍し、そのうちのひとりが教区に雇用されているフルタイムの職員でしたが、それ以外は皆ボランティア。お父さんのデュマス氏もボランティアのひとりでしたが、たぶん私は彼といろいろなことを、たぶん一番よく一緒におこないまた出かけたと思います。(上の写真右が2006年のお父さん)

カテキストというのは、教会で洗礼志願者や子供たちに教会の教えを教える先生のことですが、もちろんガーナではそれにとどまらず、教会のありとあらゆることを担当してくれる方々です。というのも、オソンソン教会には20を超える巡回教会があり、それを神父は私ひとりだけで担当していました。20の教会の中には、日曜のミサ参加者が500名を超える大きな教会が二つ。それ以外でも、年間に200名近い洗礼志願者がいる大きな教会でした。

そこで40名のボランティアのカテキストは、そういった巡回教会を担当し、日曜の『御言葉の祭儀』を司式したり、洗礼の準備をしたり、病人訪問をしたり、時には埋葬を行ったり、本当によく尽力してくれました。特に洗礼の準備には、さすがに20カ所を定期的にまわって200名以上に要理を教える力は私にはなく、最終試験以外はほとんどカテキストに頼りっぱなしでした。

加えて、当時、彼らの言葉であるコロボ語の聖書はなく、ミサや礼拝のたびに、英語の聖書から翻訳をしなくてはならなかったのです。そして肝心の私がコロボ語ではなく英語で説教するので(ミサ自体はコロボ語)、その通訳もしてもらいました。残念ながら、半年間の言葉の勉強では、日常会話以上には上達せず、電気もない村で、月曜から金曜まで巡回を続け各地でミサと説教をして回る毎日では、事前の翻訳をして準備をする時間をとることも不可能でした。ですからカテキストの存在は欠かせません。

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そのような中で、デュマス氏の特筆するべき才能は、その美しい手書き文字と、徹底的な病人訪問の熱意でした。私がオソンソンにいた当時の洗礼台帳は、ほとんどがデュマス氏の手書きであろうと思います。見事に美しい字でした。そして病人訪問は、本当に徹底的でした。おかげで私はいろいろな人のところへ連れて行かれましたが、上の写真もそのひとり。向かって左が1993年頃のデュマス氏。右がしばしば病院へ連れて行ったダニエルさん。朝から晩までかかる病院通いに、いやな顔一つせず、デュマス氏はつきあってくれました。

いま彼の息子、マーティン・デュマスが神言会の司祭となって、この日本で働いてくことを本当に不思議に思います。デュマス神父のお父さんのために、お祈りください。

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2015年1月13日 (火)

教皇様、スリランカに到着

教皇様は本日スリランカの首都コロンボに到着されました。今日から15日までスリランカを訪問され、その後19日までフィリピンを訪問されます。以下のビデオは、本日スリランカに到着された教皇様の歓迎式典の様子です。

数日前に大統領に就任したばかりのマイトリパラ・シリセナ氏の歓迎の挨拶や(33分40秒くらいから、英語です)、そしてそれにつづいて教皇様の英語でのスピーチがあります(37分くらいから)

スリランカでは特に内戦が終結後の平和のために、またフィリピンでは台風などの災害からの復興のために特に祈られることを目的とされています。教皇様の司牧訪問の成功のために、お祈りください。

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2015年1月11日 (日)

今年もすでに始動

本日は主の洗礼の主日でした。降誕節もこれで終わり、明日からの典礼は年間に戻ります。もちろん典礼に休みはないので元旦から教会は始動していますが、それ以外の会議などの業務は、先週から早速始まりました。

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1月8日木曜には定例の常任司教委員会。2月には司教総会がありますので、そろそろその議題の準備を始めなくてはなりません。同じ日の午後3時から、HIV/AIDSデスク会議。2月7日の午後に、四谷のニコラバレを会場に、関東圏のカトリック中高の先生を対象としたHIV/AIDSセミナーを開催する予定ですが、その準備のために、担当の先生方数名にも参加していただき、プログラムの詳細を話し合いました。(写真は東京・潮見のカトリック会館ロビー)

1月9日には午前中からカリタスジャパンの援助部会会議。いつもの通り、国内外の援助支出についての審査を行いました。それに加えて、まもなく4年となる東日本大震災復興支援への取り組みについても話し合われました。すでにカリタスジャパンからたびたびニュースでお伝えしてきたところですし、4年目の活動報告書もまもなくお手元に届くことになるかと思いますが、復興支援は長期戦です。カリタスジャパンが今回皆様にお願いした募金は、いわゆる義援金のためではありません。義援金は被災者にそのまま配分されるお金を主に意味しており、短期的に支出されるものですが、カリタスジャパンでお願いしてきたのは長期的な復興支援活動のための募金です。

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カリタスジャパンでは昨年11月の段階で、国内から約8.5億円、国際カリタスから11.2億円の募金を受領し、これまでのほぼ4年間でそのうちから15.2億円ほどを支出しました。現在復興支援は、仙台教区サポートセンターを中心として、仙台教区各地に設けられたボランティアセンター8カ所を通じて行われています。そのうち、宮古市にある札幌教区担当のベースと、大船渡にある大阪教会管区担当のベースに関しては、おもにそれぞれの教区や教会管区の独自の募金を主な活動費用としていますし、長崎教会管区が担当する大槌のベースや、東京教会管区の担当する原町のベース、さらにさいたま教区の担当するいわきベースと名古屋教区の障がい者自立センター釜石も、それぞれの教会管区や教区が出来る範囲で費用を持ちだしています。これら仙台教区以外の担当するベースと、仙台教区直轄の米川、釜石、石巻の各ベースに、福島デスクが設置されており、それらすべての復興支援活動をカリタスジャパンが募金を通じて支えています。

現在のペースで行けば、現在各ベースが行っている復興支援活動を、カリタスジャパンは皆様からの募金に基づいて今後4年から5年は継続していくことが可能だと推測しています。従って現時点で手元に残っている約4.5億円と、今後期待される海外からの支援金(ただし額は少なくなると予測されます)は、この活動を継続していくために、毎年の予算に基づいて計画的に支出されていきます。詳細は、毎年の活動報告を是非参照ください。このリンクからカリタスジャパンのホームページに飛びます。また会計に関しては国際カリタスの基準に基づき、監査法人のデロイトによって、外部監査が毎年行われています。

さて復興支援活動では、仙台教区の平賀司教が発表されている復興のための指針『新しい創造』基本計画を具体化していく努力を続けています。現在は第三期に入っており、そこでは、第二 期に掲げた四つの項目、すなわち①生活の再建 ②経済的自立の支援 ③精神的ダメージのケア ④コミュニティ形成支援のうちの特に③と④を継続して行うことを基本としています。ご存じのように地域共同体は被災地において未だに復興されていません。地域の社会福祉協議会からは様々なリクエストがカリタスのボランティアベースに寄せられています。できる限りそういった地元の方の声に応えて、復興支援を継続していきたいと思います。

そういった活動のために、カリタスジャパンの援助部会会議では、長期的な活動の計画について、常に振り返りと見直しを行っております。

援助部会会議の後に、金曜日の午後3時からカリタスジャパンの事務局会議を行いました。一昨年から継続している反貧困キャンペーン『五つのパンと二匹の魚』も。まもなくひとまずの終着点である今年5月の国際カリタス総会を迎えようとしています。今後の取り組みについて話し合いました。

今年は四旬節にいくつかの地域でカリタスジャパンの黙想会を再び開催します。私は2月21日に大阪のサクラファミリアで、また3月14と15日には静岡の城内教会で共催の形で黙想会を行います。詳細はまたカリタスジャパンから発表されることになります。また啓発部会と援助部会の両者で、9月22日に東京において、開催中の正義と平和協議会全国大会の中で分科会を行うことにしています。

そんなようなことを、この数日間に行われた四つの会議で話しておりました。昨晩から数日間、名古屋の南山教会で働いているマーティン・デュマス神父が新潟を訪ねきてくれています。いうまでもなくガーナ出身の神言会員。30年近く前に私が働いていたガーナのオソンソン教会の出身です。日本語が一段と上達しておりました。

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2015年1月10日 (土)

教会の普遍性と現実の世界

新しい年が始まって早々に、フランスで悲しくなるほどに残忍なテロ事件が起きてしまいました。無残にも殺害された新聞社の関係者、人質となる中で生命を落とされた方々、そして職務執行中に殉職された警察官。亡くなられた方々の永遠の安息を祈ります。また負傷された方の回復と、大きな傷を負った地域社会の方々の心の安らぎのためにも祈ります。

言うまでもなく、言論の自由を封殺するためにテロに走る行為を正当化することは許されることではありません。それ以上に、問答無用で人間の生命を暴力的に奪う行為は、その生命の創造主の前で正当化できるものではありません。このような残忍な事件が、新しい年の幕開けに起きてしまったこと、そして多くの人を恐怖の暗闇に引きずり込んでしまったことは、本当に残念で悲しいことです。

同時に私たちは、同じようにして問答無用で生命を奪われてきた多くの方々の無念に心を向けざるを得ません。今回はその事件がフランスという先進国の首都で発生したこともあり、世界中に衝撃を与え注目を浴びましたが、教皇様が何度も呼びかけておられるように、聖地をはじめとした中東地域やウクライナ、そして中央アフリカをはじめとしたアフリカ各地では、何らかの理由付けによって行為を正当化しながら、多くの人の生命が奪われ続けています。

そういったことを考えるとき、あらためて神の平和の実現を訴えていかなくてはならないと感じますし、生命の尊厳を、その始まりから終わりまでの尊厳を、さらに訴え、またそのために祈らなければならないと感じています。

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さて、上の写真です。1月8日の新潟日報朝刊に加茂教会(新潟県加茂市)の信徒である阿部ジュリアさんの記事が大きく掲載されていました。ご覧になった方もおられるでしょう。新潟教会の昨年のクリスマス会でも、他のフィリピン人信徒の方と一緒に、歌とダンスを披露してくださいましたが、いつもその笑顔で本当に周りを明るくしてくださる方です。また記事に紹介されているとおり、英語を教えることだけでなく、地域において、様々な災害などの支援のためにチャリティー活動を行っており、私が担当するカリタスジャパンなどでも、ジュリアさんたちのグループから募金をいただいたことが何度もあります。

あらためて言うまでもなく、新潟教区には各地にたくさんの外国出身の信徒がおられます。その多くが結婚を通じて地域の一員として定住されています。常々申し上げていることですが、神様は本当に私たちの想像を超える仕方で福音を告げようとされます。私はこういった海外から来られた信徒の方々は、生活を通じて福音を証しするようにと遣わされた福音宣教者ではないかと感じています。明るい笑顔で地域の中で様々な活動に携わっているその姿こそが、福音を証しする生き方、つまり福音宣教者の生き方です。

それ以上にその存在は、教会の普遍性を私たちに肌で感じさせてくれています。教会は、もちろん国境で定められた国の単位を基盤として存在していますが、その国境の枠組みにとらわれて存在をするものでもない。教会憲章はこう書いています。

「したがって、地上のすべての民族の中に神の一つの民が存在している。それは地上的ではなく天上的性格をもつ自国の市民をすべての国民から受け入れているからである。実際、世界中に散在しているすべての信者は、聖霊において他の信者と交わっており、こうして『ローマに住んでいるものは、インド人が自分のからだの一部であることを知っている』(教会憲章13)」

教会は地理的な広がりの中で、国境に規定される国家や異なる文化のうちに存在する中で、「その国の教会」として存在するものの、その地上的制約によって分断されているのではなく、天上的性格を持つものとして国境を超越し、神の一つの民として存在しています。それが教会が「普遍的(カトリック)」であるという意味です。

様々な国から来られた信徒の方々と。一緒になって福音を証ししながら生きていくとき、私たちは教会の普遍性を肌で感じるのです。それは単に海外からきた人たちがたくさん一緒にいるという、いわば『国際的』とは少しばかり異なり、同じ一つの体を一緒に形作っているという意識としての普遍性です。教会共同体は『国際的』なのではなくて、『普遍的』なのです。

現実の世界はどうでしょう。国や民族による違いをことさらに意識し、それによって対立が増加しているという雰囲気が重くのしかかりつつあるように感じます。その中では、異質な存在を排除しようとする動きすら頻繁に見受けられるようになりました。現実の世界から互いを受けいれる寛容さが姿を消してしまっては、何とも住みにくい空気が支配するようになるでしょう。その中にあって、教会は神の民としての普遍性をあらためて私たちに考えさせます。そして異なるもの同士が、互いに兄弟姉妹として一つの共同体を作っているのだという意識を、夢物語のように感じるかもしれませんが、少しずつ浸透させる努力を続けたいと思います。

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2015年1月 5日 (月)

新しい枢機卿の任命

新潟の司教館は本日が仕事始めでした。お正月は完全に休日モードでしたので、気持ちを切り替えていつも通りの生活に戻り、一年を始めました。

さて昨日のお昼、バチカンでアンジェルスを唱えられた教皇様は、その後、新しい枢機卿の任命を発表されました。昨日発表だろうと聞いていましたので、私もユーチューブの生中継で見守っておりました。

すでに新しい枢機卿を任命する枢機卿会(Concistory)が2月14日に開催されることが告知されておりましたので、昨年の例に倣って1月のはじめあたりに発表があるだろうとされておりました。なお枢機卿会は2月12と13日にも開催され、そこでは教皇庁の改革について話し合いが行われ、14日に枢機卿の任命式があり、翌15日に新しい枢機卿と一緒に教皇様はミサを捧げられる予定です。

さて今回任命されたのは20名ですが、そのうちの15名が教皇選挙権を持っている80歳未満の枢機卿です。以下の方々。

  • Archbishop Dominique Mamberti, Prefect of the Supreme Tribunal of the Apostolic Signatura
  • Archbishiop Manuel José Macario do Nascimento Clemente, Patriarch of Lisbon (Portugal)
  • Archbishop Berhaneyesus Demerew Souraphiel, C.M., of Addis Abeba (Ethiopia)
  • Archbishop John Atcherley Dew of Wellington (New Zealand)
  • Archbishop Edoardo Menichelli of Ancona-Osimo (Italy)
  • Archbishop Pierre Nguyên Văn Nhon of Hà Nôi (Viêt Nam)
  • Archbishop Alberto Suàrez Inda of Morelia (Mexico)
  • Archbishop Charles Maung Bo, S.D.B., of Yangon (Myanmar)
  • Archbishop Francis Xavier Kriengsak Kovithavanij of Bangkok (Thailand)
  • Archbishop Francesco Montenegro of Agrigento (Italy)
  • Archbishop Daniel Fernando Sturla Berhouet, S.D.B., of Montevideo (Uruguay)
  • Archbishop Ricardo Blázquez Pérez of Vallodolid (Spain)
  • Bishop José Luis Lacunza Maestrojuán, O.A.R., of David (Panamá)
  • Bishop Arlindo Gomes Furtado, of Santiago de Cabo Verde (Archipelago of Cape Verde)
  • Bishop Soane Patita Paini Mafi of Tonga (Island of Tonga)

アルファベットのままにしたのはなんとお読みするのか、私にはよくわからない名前の方もおられるので。この中に、アジアの出身者は3名。ミャンマーのヤンゴンのBo大司教(サレジオ会)、タイはバンコクの Kovithavanij 大司教、そしてベトナムはハノイのVăn Nhon 大司教。ミャンマーから枢機卿が任命されるのは初めてのことです。日本からは今回も任命はありませんでした。

一番若いのはオセアニアのトンガのMafi司教で、53歳です。トンガから枢機卿が任命されるのも初めてのことです。そして今回の任命では、教皇庁(クリア)のメンバーは一名のみ。先日まで国務省に勤め、いわゆるバチカンの外務大臣的仕事をし、現在は使徒座署名院最高裁判所の長官を務めているMamberti大司教だけでした。

前回同様、教皇様はこれまで枢機卿を出していない国を優先し、伝統的に枢機卿座と言われている教区を選択されませんでした。発表直後にバチカンの広報から、14の異なる国が代表されているように、任命の一番の基準は「普遍性」であると発表がありました。教皇フランシスコにとって優先度の高い、周辺部に置かれている小さな教会共同体の声も反映されるようにとの配慮であるとのことです。

新しく任命される枢機卿様たちのために、そして教皇様のためにお祈りください。

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2015年1月 1日 (木)

年頭司牧書簡を掲載しました

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大雪が心配された大晦日から元旦の新潟でしたが、市内は割と穏やかな朝となりました。それでも昨晩は冷たい雨が降りしきり、深夜ミサに参加者がいるかどうか心配でした。始まる直前まで、新潟の聖堂には10名も参加者がいない状態でしたが、直前に、主に鳥屋野教会の宣教家族の方々などが集まり、最終的には50名以上の参加をいただいて、新年最初の司教ミサを行いました(写真)。

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そして夜が明け、今日の午前11時からの新年のミサは、主任司祭のラウル神父が司式して、70名を超える参加者でした。ミサ後には信徒会館一階ホールで、簡単な新年の祝賀会を行いました。

どうぞ今年一年が、本当に良い一年となりますように、皆様お一人お一人に、神様からの豊かな祝福があるように、お祈りいたします。

新年に当たり司牧書簡を書きました。小教区には発送してありますので、是非一部ずつとられてご一読いただけると幸いです。なおホームページ『司教の日記』の『新潟司教の文書庫』にも掲載いたしました。こちらのリンクから、掲載ページに飛ぶことも出来ます

良いお正月を過ごされますように。

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新年明けましておめでとうございます

Isao1501
皆様、新年明けましておめでとうございます。

2014年中は本当に多くの方々にお世話になりました。新潟教区は、他の教区の方々に多くの助けをいただいて活動を続けてきました。昨年5月には、長年の懸案でもあった司教館と教区本部を、教区内外の多くの方々の力を得て、完成させることも出来ました。本当に感謝いたします。また新潟の司教として、ちょうど10年という節目を、聖地巡礼をもって感謝のうちに記念することも出来ました。皆様への感謝のうちに、2014年を終えました。

どうぞ2015年という新しい年が、皆様お一人お一人にとって、神様の豊かな祝福に満たされた充実した年となりますように。

新しいこの一年、日本の教会にとっても様々なことがあるでしょう。高山右近の列福が近いと伝えられていますし、3月17日には日本の信徒発見の150周年のお祝いが長崎であります。3月末には日本の司教団にとって7年ぶりとなる、アドリミナ・聖座訪問が行われます。教会のため、特に教皇様のために、また司教のため、司祭のために、そして修道者のためにどうぞお祈りください。特に教会は奉献者の年を祝っています。修道生活を営んでいる方々のために、その召命も含めて是非お祈りください。

また日本という国に限らず、この地域、そして世界中に、神の望まれる世界が実現しますように、今年も主イエスの福音を高く掲げ、それぞれの置かれた場において、努力を続けて参りましょう。

新年の司牧書簡を書きました。教区内の小教区には発送してあります。どうぞ一部ずつおとりになり、目を通していただけましたら幸いです。後ほど、ホームページ『司教の日記』にも掲載いたします。

それでは、新しい年の初めに当たり、皆様の上に、生命の創造主である神様の豊かな祝福があるように、お祈り申し上げます。

2015年1月1日

カトリック新潟教区司教

タルチシオ菊地功

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