清心中学3年静修と、仙台サポート会議
さて海外研修からの時差と、帰国したその日に痛めた喉の二つから回復するのに手間取りましたが、何とかなりました。
先週の木曜日、29日は午後から新潟教会を会場に、新潟清心女子中学3年生の静修。卒業を前に、一日心を落ち着けて、祈りのうちに人生の振り返りをする特別な日です。午後1時から、新潟カトリックセンター二階ホールで、40分ほどお話をさせていただきました。
この中3は昨年末のクリスマス会で、静止聖劇『タブロー』を披露してくれた学年ですが、そのときの主要テーマは『児童問題』。鋭い視点から、新鮮で刺激のある聖劇を見せてくれた学年です。『児童問題』の根底にあるのは、もちろん世界の貧困問題です。そこで、カリタスジャパンが国際カリタスとともにすすめている貧困撲滅キャンペーンについて、お話をさせていただきました。話の後は、生徒たちによる分かち合い。世界の現実を前に、単純に白黒つける情報に流されずに、複雑に絡み合った現実をじっくりと読み解き、人類に共通の善を実現する世界を生み出す努力を続けていってほしいと思います。
貧困問題へのカトリック教会の取り組みの根底は、もちろん神の被造物である一つ一つの生命が等しく尊厳のある生き方が出来る世界の実現ですが、ただしそれは、一般に言う『平等』とは異なっています。教会の発展への考えを一番端的に表しているのは、教皇聖ヨハネパウロ2世の次の言葉でしょう。
「発展とは、富める国が現在享受している生活水準にすべての人を引き上げることではなく、労働を結集してよりふさわしい生活を築き上げること、個々人の尊厳と創造性、そして天職、すなわち神の召し出しにこたえる力を具体的に高めることなのです。(回勅「新しい課題」29)」
神の個々人への『召し出し』の実現を妨げている社会の現実を是正していくことが、貧困撲滅の重要な課題のひとつです。先日の海外研修でのマルクス枢機卿の講演の中にもあったのですが、教皇フランシスコの率いる教会が、世界の現在の主流である経済システムに対して批判的であることから、『共産主義者だ』と批判を受けているが、そうではない。それは資本主義の否定ではなく、いわば『エセ資本主義』の否定であり、教皇フランシスコは『資本主義』を超越したその先にあるシステムを語っている。その目指す先が、この聖ヨハネパウロ2世の言葉に表されているように思います。
もとより、教会と共産主義は、神を信じるものと、神を否定するものとで根本から相容れるところではありませんし、具体的にめざす方向性で共通点があったとしても、根本で一致することは困難です。ですから、教会の現状批判の姿勢に対して、『共産主義者だ』と指弾することは、感情に訴えるだけで、それほど理に適ったことではありません。
現在の『資本主義』を超えたところに教会が求める基準は、これまた次の聖ヨハネパウロ2世の言葉に、端的に記されている連帯を実現する姿勢に導かれた世界の実現であろうと思います。
「新しい『愛の創造力』の時代です。それはただ単に、効果的な援助提供の中に見られるだけでなく、隣人になる能力、苦しむ人と連帯する能力のうちにも見られる創造力であり、辱めを感じさせるような施しではなく、兄弟姉妹としての分かち合いです。(使徒的書簡「新千年期の始めに」50)」
お話と分かち合いの後、校長先生のお話があり、そして新潟教会聖堂に移って感謝ミサを捧げました。インフルエンザがはやっているため、数名の欠席者がありました。元々この学年は人数が少なく、欠席者もあったため、21名ほどの参加でした。
その日の夜に仙台へ移動。金曜日の午前10時から、仙台の教区本部で、復興支援の会議でした。10時からはボランティアベースなどの担当者が集まって意見交換をする、全ベース会議。今回が19回目とのこと。私など司教は、オブザーバーとして後ろに陣取り、各ベースの現状と課題について聞かせていただきました。
そして午後1時からは、定例の仙台教区サポート会議。今回で32回目の開催です。カリタスジャパンが国内外からいただいた募金は、仙台教区内のボランティアベースなどを通じた被災者支援活動のために使われています。以前にも記したように、昨年11月の段階で、国内から約8.5億円、国際カリタスから11.2億円の募金を受領し、これまでのほぼ4年間でそのうちから15.2億円ほどを支出しました。『義援金』であるならば、一刻も早く、すべてを被災者に配分するのでしょうが、この募金は、被災者の方々の復興を支援するためのものですから、短期に終わらず、長期に渡って歩みをともにし支えていくために活用します。被災地各地に設けられているボランティアベースによる、たとえば仮設訪問やカフェの運営など、地元の社会福祉協議会や自治会との連携の中で行われる支援活動は、まだまだ継続が必要です。そのために計画性をもって、募金を活用していかなくてはなりません。
昨日の会議では、仙台教区から、いまのような支援活動は、少なくとも震災発生10年までは続けたいという意思表示がありました。ですから今後どのような形で、各ボランティアベースの活動を展開していくのかが、昨日の会議の一番のテーマでありました。
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