神言会という修道会
ご存じのように、わたしは「神言会」という修道会の会員です。教区司祭から司教になった者と、修道会員から司教になった者に何か違いがあるのかと言えば、司教としては何も異なりませんが、ただその育ってきた背景が違っていると言うことができます。(写真は1986年のわたしの司祭叙階式です。司式は故相馬信夫司教様です)
修道者は司教になることによって修道会を退会するわけでも、修道者を辞めてしまうわけでもありません。ですからわたしは、自分の名前の後に「SVD」と記します。神言会のラテン語の名称の頭文字です。
教会法には定めがあって、こう記されています。「705条:司教職にあげられた修道者は、その会の会員として留まる。ただし、従順の誓願の効力によってローマ教皇のみに服属する。また、自らの賢明な判断によって自己の立場と相容れないと認められる義務には拘束されない」
修道者は、常に総長や院長といった「上長」の下にあり、従順の誓願によって生きていますが、司教になると修道会の上長ではなく、直接教皇様への従順の義務が生じます。ですから、わたしが修道者の司教だと言っても、修道会の上長に相談したり許可をもらったりすることはありません。加えて、修道会の会憲で、司教になった時から、修道会内部におけるすべての選挙権(投票権と被選挙権)を失っています。その意味で、修道会の会員でありながら、その実そうでもないという、微妙な立場なのかもしれません。
もちろんご存じのように、教皇様ご自身もイエズス会という修道会の会員である修道者として、司教になられています。
さて、東京教区において神言会と言えば、吉祥寺教会の司牧を担当している修道会です。他の多くの修道会が東京に日本の本部を置く中で、神言会は名古屋に日本の本部を置いています。
名古屋では、主に愛知県内と岐阜県の教会司牧とともに、南山学園の運営に携わっています。小学校から大学院まで。わたしもそこで、中学から大学院まで学びました。名古屋には司祭養成のための神学院も持っています。
そして、長崎には長崎南山学園で中学と高校、そして西町教会の司牧と南山第二学園で幼稚園と小学校の運営に携わっています。
さらに新潟教区内では、秋田県全域と、山形県と新潟県でも教会司牧に携わっています。現在はこれ以外にも、福岡教区や仙台教区で会員が司牧に関与するために派遣されています。
「神言会」という漢字の名称でも、日本の修道会ではありません。
1875年にドイツ人の司祭、聖アーノルド・ヤンセンが創立した修道会です。当時ドイツには宣教師を派遣する会がなかったので、ヤンセン神父は、中国に宣教師を送るために会を創立することを長年考えていました。紆余曲折を経て、宣教修道会を創立することになりましたが、当時はビスマルクの時代で、ドイツ国内では修道会創立に困難があったため、国境を越えてオランダに入り、シュタイルという町で創立されました。「神のことばの修道会」ですので、それぞれの国の言葉に訳されて、日本では神言会、台湾では聖言会、英語圏ではSociety of the Divine WordとかDivine Word Missionariesと呼ばれています。(写真は、オランダはシュタイルにある創立の修道院地下聖堂の創立者の墓所)
最初の宣教師は、やはり中国に派遣されました。イタリア人の会員で、聖ヨゼフ・フライナーデメッツ神父と言います。ちなみにこの大先輩の列聖のための病気治癒の奇跡は、名古屋で記録されています。わたしがガーナから日本に戻った後のことですから、いってみればつい最近です。
全世界70以上の国に、6千人を超える会員が派遣されています。現在会員の中で一番多い国籍はインドネシアであろうと思います。日本管区には120名ほどが派遣されています。なお、総本部はローマにあり、現在の総会長は、長年フィリピンで働いたドイツ人司祭です。
なかでも宣教が困難で初期段階にある地域で、積極的に働こうとする修道会です。またできる限り様々な国の出身者が、言葉や文化の違いを超えて一緒に生活し働くことを基本としています。そのため、わたしも1986年に司祭に叙階されてから8年間、アフリカのガーナに派遣されて、小教区で働いていました。当時一緒に派遣された共同体(地区)で働いていたのは、ガーナ人、ポーランド人、インド人、フィリピン人、パラグアイ人の会員でした。(写真は、2010年にガーナ管区の修練院で)
教育は、1907年に神言会員が初めて日本に派遣されて以来、重要な福音のあかしの場と考えられてきました。最初に秋田に会員が派遣されたことから、新潟教区は神言会員が初代の教区長となりました。1912年のことです。その初代新潟教区長であったライネルス師は、当初から学校の設立を考え、その後名古屋教区長に移ってから、すぐに南山中学校(旧制)を創立されました。1932年のことです。
なお、聖霊会も同じ聖アーノルド・ヤンセンが創立した修道会で、聖霊奉侍布教修道女会が正式名称です。日本には1908年に、やはり秋田に派遣されてきましたが、現在は神言会と同じく、名古屋に日本の本部を置いています。
また聖アーノルド・ヤンセンは、御聖体の永久礼拝会も創立し、永久礼拝の聖霊会は、アジアではフィリピンなどにいくつかありますが、来日はしていません。
この機会に、神言会という修道会を、少しでも多くの信徒の方々に知っていただくことができれば、幸いです。
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