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2020年8月 6日 (木)

2020年平和旬間

毎年、8月6日の広島原爆忌から、9日の長崎原爆忌を経て、15日の終戦記念日まで、10日間を平和旬間として、日本の教会は平和について語り、学び、祈っております。今年は広島と長崎に原爆が投下されてから75年の節目の年ですが、残念ながら現在の感染症の状況から、各地の行事は縮小され、東京教区においても、例年行われてきた様々な行事が中止となりました。教区のホームページにおいては、それでも出来ることをと、祈りの短冊を15日まで募集しています

あらためて、戦争で亡くなられた多くの方々の永遠の安息をお祈りいたします。戦争のために人生の道筋を大きく変えられた方々も多くおられるでしょうし、心身に重荷を負われた方も多くおられたことと思います。夏の暑さの中に佇むとき、多くの方の無念の思いが、天に昇る上昇気流のようにそこここに満ちあふれていることを感じます。その思いを祈りとして、いつくしみ深い御父にささげます。

歴史を振り返るまでもなく、わたしたちは常に平和を語りながら同時に戦いを続けています。いのちを守ることを語りながらいのちを奪い合っています。自分ひとりが同時にその二つの行為をしていなくとも、わたしたちは一匹狼として生きているわけではなく、世界中の人と繋がれて「共通の家」で生きている仲間です。なんともいえない矛盾の中で、わたしたちは歴史を刻んでいます。

「戦いを止めよ」と叫んだからと言って、それですべてが解決することはありませんし、複雑な国際関係がその一言で修復されるわけでもありません。そこには様々な側面からのありとあらゆる種類の努力の積み重ねが不可欠ですし、その積み重ねはあまりに膨大で、人間の手に余るものなのかも知れません。政治、経済、そして学問などの様々な分野での努力を積み重ね続けるためにも、そこには誰かが理想を語り続けなければなりません。たとえそれが夢のようであっても、目指すべき理想を語ることを続けたいと思います。「戦争は人間のしわざ」だからです。

東京大司教区「平和メッセージ」
2020年8月6日 平和旬間
大司教 菊地功

 

「過去をふり返ることは、将来に対する責任を担うことです」
教皇ヨハネパウロ二世は、1981年に広島でこう述べられました。

今年、2020年は、節目の年でもあります。75年前の1945年、広島と長崎で核兵器が使用され数多くのいのちが奪われました。また、世界が巻き込まれた第二次世界大戦が、終わりを迎えました。この75年の間、戦争の悲惨な現実が繰り返し多くの人によって語り継がれてきたのは、戦争が災害のように避けることのできない自然現象ではなく、まさしく「戦争は人間のしわざ」であって、そもそも「人類は、自己破壊という運命のもとにあるものでは」ないからこそ、その悲劇を自らの力で避けることが可能であるからに他なりません。

教皇ヨハネ23世は、回勅「地上の平和」を、次の言葉で始め、教会が考える「平和」の意味を明らかにしています。
「すべての時代にわたり人々が絶え間なく切望してきた地上の平和は、神の定めた秩序が全面的に尊重されなければ、達成されることも保障されることもありません」

教会が語る「平和」とは、神の定めた秩序が実現している世界、すなわち神が望まれる被造物の状態が達成されている世界であり、それは実現してはいません。

今年の初めから、わたしたちは経験したことのない事態のただ中におります。新型コロナウイルスの感染症は一つの国に留まらず、いまや世界中を巻き込んで拡大し、まさしくグローバル化した世界を巻き込んで各地に多大な影響を与えています。多くの方が大切ないのちをなくされた国も多数存在し、今この時点でも、いのちの危機に直面している人は少なくありません。また社会的に弱い立場にある人や貧しさのうちにある人は、より厳しい危機に直面しています。

グローバル化した世界を巻き込んで発生したいのちの危機は、その解決のためにも、世界全体の視点からの連帯と支え合いが必要であることを明確にしています。

教皇フランシスコの指示を受けて、この危機に総合的に対処するために、教皇庁にはCovid19委員会が設置されました。その責任者であるタークソン枢機卿は、7月7日に会見を開き、次のように述べておられます。

「わたしたちの世界には、一致のきずなを回復し、誰かをスケープゴートにせず、互いの批判合戦を止め、卑劣な国家主義を否定し、孤立化を否定し、そのほかの利己主義を否定するようなリーダーシップが必要だ」

不安の闇に取り残されたように感じているわたしたちは、ともすれば誰かを悪者に仕立て上げることで、自分の心の安心を得ようと誘惑されてしまいます。いのちの危機は、排除や排斥がもたらす分断によって、より深められてしまいます。いまは対立するときではなく、いのちを守るために、互いに手を差し伸べ合うときです。いのちを奪うことではなく、守るために行動するときです。

「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる」

わたしたちは、あらためて主のこの言葉に励まされ、神が大切にされるたまものであるいのちが等しく大切にされ尊重される世界を実現し、平和を確立していきましょう。また、共通の家を危機に陥れる様々な課題が複雑に絡み合う現実の中で、神の平和を実現するために、幅広い連帯の中で、地道に取り組んでいく決意を、戦後75年の平和旬間にあたり、新たにしたいと思います。

Archdiocese of Tokyo “Peace Message”
Peace Week 2020

 

Pope John Paul II stated in 1981 in Hiroshima: ”To remember the past is to commit oneself to the future.”

This year 2020 is another milestone year. 75 years ago in 1945, nuclear weapons were used in Hiroshima and Nagasaki, and took the lives of many. This eventually led to the end of World War II. For the past 75 years, many people have repeatedly expressed the miserable reality of war, stating the fact that war is not like a calamity such as an inevitable natural phenomenon, but “war is the work of man.” In the first place, “humanity is not destined for self-destruction.” Thus, it is not beyond human power to prevent such disaster.

Pope John XXIII started the encyclical “Pacem in Terris” with the following words, clarifying the meaning of “Peace” according to the Church.

“Peace on Earth?which man throughout the ages has so longed for and sought after?can never be established, never guaranteed, except by the diligent observance of the divinely established order.”

The “Peace” which the Church speaks of is the realization of a world in the order of God. That is, a world where all creatures has achieved the state according to God’s will, and such has not been attained.

Since the beginning of this year, we have been caught up in a situation we have never experienced before. The novel coronavirus disease is not limited to one country alone, but has now spread all over the world, having a great influence in various parts of this very globalized world. There are many countries where numerous people have lost their precious lives, and even at this point, many are still facing this threat in their lives. Moreover, vulnerable in the society and poor are much more afflicted by this crisis.

In order to solve this crisis of life for a world in a state of globalization, it has become clear that solidarity and support for each other on a worldwide scale is necessary.

Under the direction of Pope Francis, the Vatican Commission for Covid-19 was created to comprehensively address this crisis. Cardinal Turkson, the president of the commission, held a press conference on 7th July and stated that:

“We need global leadership that can re-build bonds of unity while rejecting scapegoating, mutual recrimination, chauvinistic nationalism, isolationism, and other forms of selfishness.”

Feeling left behind in the darkness of anxiety, we are tempted to make someone else the bad guy in order to gain our own peace of mind. The crisis of life is deepened by the divisions brought by exclusion and rejection. Now is not the time for conflict, but the time to reach out to each other to protect all lives. It is time to act to protect life, and not to take it.

“Blessed are the peacemakers, for they will be called children of God.”

Encouraged once again by the words of the Lord, let us build a world in which life is valued and respected, something that God Himself has always treasured, and let us strive to establish peace. In addition, as we live in a situation where various complicatedly intertwined issues put our common home in danger, let us renew our commitment during this Peace Week seventy-five years after the World War, to bring about God’s peace with the determination to work hard in solidarity with all peoples.

 

6 August 2020
+ Isao Kikuchi, SVD
Archbishop of Tokyo
 

 

 

 

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