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2023年5月20日 (土)

国際カリタスの総裁に選出されました

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すでにお聞き及びのこととは思いますが、5月11日から16日までローマで開催されていた国際カリタスの総会で、総裁(会長)に選出されました。任期は今回の総会の終了時から次の総会、すなわち4年後の2027年の総会終了時までです。

ローマのコンフェレンスセンターで開催された国際カリタスの総会には、カリタスジャパンの二人(成井司教様、瀬戸神父様)を含め400人を超える代表が参加し、5月13日夕方、今年で二期8年の任期を満了したタグレ枢機卿の後任総裁(会長)を選出する選挙が、5人の候補者で行われました。

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またその前日、5月12日の夕方には、5人の候補者がそれぞれ10分の持ち時間で、総会参加者にスピーチをする時間もありました。

また5月15日には、二人の候補者から事務局長を選出する選挙が行われ、イギリス出身で現在はスコットランドのカリタスであるSCIAFの責任者を務めるAlistair Dutton氏(わたしの向かって右隣り)が同じく4年の任期で選出されました。また、新しい評議員会において副会長と会計の選挙も行われ、副会長にはこのポジションで初めての女性となるカリタスオーストラリアの責任者Kirsty Robertson氏(わたしの向かってすぐ左隣り)、会計にはカリタスヨーロッパの会計責任者でもあるベルギー出身のPatrick Debucquois氏(左端)が選出され、これから4年間の新しい指導部が決定しました。

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国際カリタスは世界各国・地域の司教協議会によって認められている「カリタス(愛)」の活動を行う団体による連盟組織です。国際社会では国際赤十字に次ぐ世界で第二の規模を持つ人道支援NGO組織と言われています。日本からは、司教協議会の委員会である「カリタスジャパン」が、国際カリタスの連盟に参加してきました。現時点では世界各地から160を超えるカリタスが連盟に参加し、教皇庁の総合人間開発省のもと、バチカンに本部事務局を置いています。

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四年に一度開催される総会では、連盟全体の活動計画や予算計画と共に、総裁(会長)、事務局長、会計が選出され、同時にその後4年間の役員会のメンバーも承認されます。毎年の会費を納入していないと選挙における投票権がありませんので、アフリカなどのいくつかの国が総会に参加したものの投票することができませんでした。それでも、わたしが選出された総裁選挙では、投票総数は143票でした。

なお、事務局長はローマ本部で有給の契約職員として常勤となりますが、総裁(会長)、副総裁と会計は無給の非常勤です。したがって、今回わたしは総裁(会長)に選出されましたが、ローマに引っ越すわけではなく、必要に応じてローマなどに出かけることになりますので、東京を離れるわけではありません。

事前に「司教の日記」にも書きましたが、わたしは本当に選出されるとは思っていませんでしたので、心の底から驚き、多少怖じ気づいています。なんといっても昨年11月、教皇様は国際カリタスの本部事務局の運営に問題があるとして、総裁であるタグレ枢機卿以下、当時の事務局長や評議員などすべてを解任し、外部のコンサルタントに一時運営を任せていました。その間、コンサルタントと、バチカンの担当部署である総合的人間開発省のチェルニー枢機卿などが、国際カリタスの規約を書き直し、教皇様がそれを認可したばかりです。ですから、この新しい指導部にとっては、ゼロからの立て直しがまず第一の務めとなります。そしてそれは、かなり困難を極めるものと思います。

総裁選挙は立候補制ではなく、連盟に加盟する団体からの推薦(ノミネート)を受けてカリタス内部の候補者委員会が審査し、その後、バチカンの国務省の審査を通過して初めて候補者と認定されます。わたしはカリタス台湾がノミネートしてくださったと伺いました。

事前の複数のソースからの情報では、ほかのある方が本命であると聞いていました。わたしもよく存じ上げている方でしたので、間違いがないと思っていました。ですからわたしは準備もそこそこに、総会が始まってから12日の朝にローマ到着。11日には教皇謁見もあったそうですので、結局教皇様には会わずじまいに。用意したスピーチも、10分と言われたところに5分分しかテキストを用意していなくて、ちょっと前振りをアドリブで入れて、それでも7分もかかりませんでした。ほかの方々は、持ち時間がカウントダウンされますので、後一秒のところまでギリギリお話しなさっておられました。

どういういきさつなのか、総裁選挙の投票は3回目の上位二名の決選投票までもつれ込み、最終的にわたしが選出されることになりましたが、その本命候補の方とわたしとの票差はたったの1票。つまりちょうど過半数の72票です。

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選出されてからが大変でした。予定では土曜に落選して、そのまま日曜には会場を離れて修道会の本部へ移り、二日ばかりローマの休日として帰国するつもりでした。ところが当選したため、日曜の午後には最初の評議員会があり、さらにその翌日までに、総裁は副総裁の候補者を指名して、月曜の評議員会で信任投票を行う規則になっているので、たった一日で、20人ほどの評議員から一人を選ばなくてはなりません。その晩から、様々な方面からのメール攻勢と、月曜朝にはなんと朝5時半に、朝食時に話したいので朝6時に食堂でとリクエストが来る始末。それから午後の評議員会まで、ああでもないこうでもないと思い巡らして、最終的に決めたのがオーストラリアのKirsty Robertson女史。国際カリタスには、これまで一期だけ女性の事務局長はいましたが、女性の副総裁は初めてとなりました。満場一致で評議員会では可決。

しかもその日には、たまたまですが、スマホに入れていた海外用のesimの調子が悪くなってあわててesimを買い直したり、PCのWIFIが不調になってアダプターの再インストールになったり、すさまじくパニック状態の一日となってしまいました。

事務局長は、以前からよく知っている人物で、かなり前に国際カリタスの本部事務局でも人道支援の責任者として働いていた方なので、彼が選ばれたことはわたしにとっては良かったと思います。ただイギリス人の事務局長とオーストラリア人の副総裁が、二人でやり合っている英語は、かなり理解が難しい・・・。

翌火曜日の午前中には、バチカンの広報へこのチーム4人で出かけていき、記者会見もありました。それぞれ少しづつ集まった20人ほどの記者の前で話しましたが、その後は個別インタビューとなり、ほとんど事務局長が引き受けて、見事に話しておられました。

カリタスは普遍教会の本質的な役割の一つである愛の業を率先して実行し、神の愛を目に見える形であかしする存在として、教会全体の福音宣教と存在そのものにとって大きな意味を持つ組織です。今回多くの加盟団体の支持をいただいて総裁(会長)に選出されましたので、教皇様の意向に従い、教会の愛の業を深めていくために、自分にできる限り力を尽くしたいと思います。

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東京教区の皆様には、わたしがまた役目を一つ増やしてしまいましたので、今後、予定の変更など大きな迷惑をおかけすることになるかと思います。大変申し訳ありません。宣教地の司教任命の担当者である福音宣教省のタグレ枢機卿様には、直接、東京教区に補佐司教を任命することを優先してほしいとお願いしましたが、こればかりは簡単にはいきません。もちろんわたしの第一の務めは東京の大司教ですので、その務めをおろそかにしないように全力を尽くします。

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