シノドスホールから:その2
シノドスは第三週が終わり、残すところあと一週間です。
ローマは、ここ数日小雨がちらつき、朝晩はちょっと涼しくなってきましたが、それでも日中は蒸し暑い日が続いています。このところ悪化しているガザの状況により、シノドスホールでも様々な声が上がっています。毎日の祈りの中では、特に中東における平和を求める祈りが捧げられ、また中東諸国の代表を通じて、自由討議の枠組みの中で、命の危機に直面する人々の声がシノドスホールに響き渡っています。これらの声を受けて、教皇様は、来たる10月27日を、平和のために特別に祈る日と定められました。
また国際カリタスでは、19日の木曜日の夜にガザでミサイル攻撃を受けた教会において、避難していた住民と共に、支援活動に当たっていたカリタス・エルサレムの職員が殺害されたこともあり、今回の事態を非常に憂慮しています。また人道支援も滞っており、攻撃の当事者に、市民の命を第一に保護する姿勢をとるように呼びかけています。
攻撃された教会ではカリタス・エルサレムの職員が5名、避難者支援に当たっていましたが、攻撃を受けた場所で支援活動を行っていた26歳のカリタス・エルサレム女性職員が亡くなり、また彼女の子供と夫も亡くなっています。攻撃を受けた直後の報道では17名が犠牲になったと伝えられています。
国際カリタスは中東地域のカリタス(Caritas MONA)と共同で声明を発表しており、一般市民とその生活のためのインフラに対する攻撃を即座に停止すること、また関係する当事者すべてが即座に攻撃をやめ、市民を保護し、人道支援を即座に安全に妨げることなく行わせ、国際法を遵守することを強く求めています。
さて今週のシノドスです。16日月曜日は、シノドスの歴史に刻まれる出来事でした。アジアの女性として初めて、日本の西村桃子さんが議長代理として、全体の司会をされました。この日は教皇様も出席され、西村さんは教皇様の隣で、司会進行をされていました。アルゼンチンで宣教者をしていた西村さんは、教皇様とはマテ茶で繋がるお友達です。
その16日月曜日と17日火曜日は、その前の週の13日金曜日から続いていた討議要項B2の話し合いが続けられ、最終的にそれぞれ35の小グループのレポートが完成し提出されました。
このレポートを書くために、事前の調査で、英語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語などの話者の参加者の中から、秘書が事前に指名されています。秘書は一つの課題に35名が必要で、それが四課題ですから、最低でも140名の秘書が必要です。会場にいるメンバーとほかの参加者をあわせると450名ほどですので、三分の一ほどが秘書を担うことになります。これが大変なのです。幸い私のような者は英語のネイティブでもないですし通常の話者でもないので指名されることはないのですが、秘書になった方は最終提出のレポートを、霊的な会話の中から聞き出して2ページ程度にまとめ、内容を類型分けし、さらにそれを全員に読んでもらい、手直しをし、さらに二回ほどにわたって行われる全体会での意見を参考にもう一度行われる小グループの分かち合いでさらなる手直しをし、最終的にレポートに仕上げます。小グループ参加者には、夜中にメールで原案が回ってきたりするので、夜遅い夕食の後も読まなくてはなりません。秘書役の皆さんが仕上げてくるレポートを読むと、とてもではないですが、英語の通常の話者ではないわたしには、ボキャブラリーの点からも、神学的知見からも、秘書はできないと感じさせられるほど素晴らしいレポートがたくさん仕上がってきています。
これらすべてをまとめて文書を作る神学者のチームがあり、さらに参加メンバーからもそこに選出されてさらに読み込む委員会も設置されていますので、最終的にどのようにまとめられるのかが楽しみです。
ただ今回は、膨大な文書を作成することよりも、来年開催される第二会期をにらんで、短い文書が用意される予定で、加えて「神の民への手紙」と題するシノドスからの呼びかけ文が用意されることになりました。これは最終週に話し合われ、採択される予定です。
18日水曜日にまたサンピエトロ大聖堂で朝のミサを共にし、今度は討議要項のB3の課題についての霊的な会話が行われました。それが終了し、各グループの秘書からレポートが提出されたのが、21日土曜日のお昼です。
その間、19日木曜日の会議終了後19時15分から、サンピエトロ広場の中にある難民のモニュメントの前で、教皇様が司式されて、移住者と難民のための祈りが捧げられ、シノドス参加者全員が祈りを共にしました。このモニュメントの中には、聖家族が描かれていると言われ、多分この下の写真の中央の人物像が、聖家族かと思われます。大工道具を手にした男性と、その後ろで幼子を抱える女性です。
20日金曜日お昼休みの間、午後2時15分から、定例で行われているシノドスの記者会見に参加するように呼ばれ、記者の皆さんに少し話をするチャンスがありました。わたしを含め4名の参加者がこの日は参加しましたが、記者会見は広報省長官のルフィーニ氏によって毎日行われており、シノドス参加者が数名ずつ、それぞれの体験を語っています。(下に、20日の会見のビデオを張ります)
わたしも、アジアでは、特に日本がそうであるが、沈黙することが好まれ、積極的に声を上げることが苦手なので、霊的会話のような小グループでの分かち合いは、参加者全員が声を上げ、心に抱いていることを表現する機会になるので、重要であること。アジアの大陸別総会でも小グループによる霊的会話は行われ、非常に多くの人に自分の思いを表現する手段として好評であったが、それは今のシノドスの場でも同様であること。また国によって言葉が異なり文化が異なる中で、普遍教会も異なる現実の中で信仰を生きている。その中でアジアは特に混沌としているが、普遍教会全体のシノドスの歩みを考えるとき、一つの型にはめるのではなく、それぞれの地域の文化や歴史を考慮することが大切であること。シノドス性は同一性ではないこと。また国際カリタスの総裁として、カリタスの愛の奉仕の業こそが、シノドス性を生きるものであり、カリタスは今も、またこれからも、教会にとってのシノドス性を生きる重要な道具となること。カリタスは世界で、困難に直面する人の尊厳を守り、促進し、上下ではなく同じ地平に立って、支え合いながらともに歩むことで希望を生み出してきた、まさしくシノドス的存在であること、などを話させていただきました。
記者会見の中で、女性の叙階について何か決まったのかと、数名の記者からの質問が出ました。シノドスの小グループでどういう話が進んでいるかを、シノドス外に話すことを控えようという教皇様の呼びかけがあるので、一体何が話されているのか、興味を持たれているのは間違いありません。具体的なことは控えますが、会場では、具体的課題の詳細については話されていません。それよりも、シノドス性とはそもそも一体何を意味しているのか、その共通理解を、普遍教会全体で持つためにはどうしたらよいのかという、根本的な課題が分かち合いの中心になっています。
明日、22日の日曜日は、午前中にローマの日本人会のミサに招かれています。また報告します。あと一週間です。残念ながら最初から最後まで体調は完璧ではありませんでしたが、最終日までしっかりと努めることができるようにお祈りください。またシノドス参加者全員のために、特に教皇様のために、お祈りください。加えて、特に中東における平和のため、またウクライナやミャンマーなど、混乱する地の平和のためにもお祈りください。
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