« 週刊大司教第167回:聖霊降臨の主日B | トップページ | アドリミナを振り返って:その6 »

2024年5月24日 (金)

アドリミナを振り返って:その5

Img_20240409_084740311

アドリミナの振り返りの続きです。

アドリミナの二日目、4月9日の火曜日です。皆がイタリア語ができるわけではないので、朝7時の宿舎共同体のミサに参加するのではなく、別な時間に日本語でミサをしようと画策しました。前回までは、スケジュールに余裕があったので、日中にバチカンのどこかの聖堂などで、自分たちのミサを入れる余裕があったのですが、今回はスケジュールを福音宣教省が用意され、みっちりと詰まっていたため、残念ながら、別の時間にミサというわけにはいきませんでした。それでも、数名はイタリア語でミサを司式できる司教さんがいますので、この週は、お手伝いとして、宿舎共同体の朝7時のミサに参加して、日本の司教の誰かが司式させていただくことにしました。

Img_20240409_090813679_20240524135301

二日目の訪問は、朝9時からいのち・信徒・家庭省から。前回2015年のアドリミナ後、2016年に信徒評議会と家庭評議会を統合してできた省で、米国出身のケヴィン・ファレル枢機卿が長官です。すでに最初のころの記事で触れましたが、次官は男性信徒、その次の局長(Under Secretary)がお二人の女性信徒です。(上の写真)

ここでは、山野内司教様が、移住者が増加して教会のメンバーの大多数が外国籍信徒であるさいたま教区の事例を報告し、それにともなう結婚と家庭の抱えるさまざまな課題について報告されました。また中野司教様からは、特にプロライフなど生命を最優先にして守る活動についての日本における取組と課題の報告がありました。

これに対していのち・信徒・家庭省からは、様々な立場からこういった課題に取り組んでいる多種多様なグループが教会内にある現実を踏まえ、教会内の対立ではなく耳を傾けあってともに歩むことが重要であるとの指摘や、その前日に教理省から発表された人間の尊厳に関する宣言「Dignitas Infinita」についての言及がありました。この文書の作成には同省も関わり、5年の時間をかけて出来上がったもので、いのちに対する重要な指摘があるのでよく目を通してほしい旨のお話がありました。また結婚については、教会法上の問題や国内法上の問題に立ち入ることは同省としてはできないが、しかし、結婚は単なる契約ではなく、実際には神からの召命であることを結婚しようとしている二人に理解してもらうための十分な準備コースが必要だと考えているとの指摘がありました。

また2027年の韓国での世界青年大会への取り組みや、7月から日本では9月に移動した「祖父母と高齢者のための祈願日」への取り組みについても、同省から質問があり、それぞれの日本での取り組みやその可能性について意見を交換しました。

Img_20240409_084149741_hdr

その後、10時20分に、総合人間開発省へ移動しました。いのち・信徒・家庭省と総合人間開発省は、トラステヴェレ地区にあるバチカンの飛び地、聖カリスト宮殿にあります。ちなみにここには国際カリタスの本部事務局もある、巨大な建物です。(上の写真、聖カリスト宮殿の中庭駐車場で)

Img_20240409_101745864_20240524135701

総合人間開発省は、2017年に開発援助評議会(Cor Unum)、正義と平和評議会、難民移住移動者評議会、保健従事者評議会のすべての業務を引き継いで設立されました。現在の長官はマイケル・チェルニー枢機卿。カナダ出身の方です。次官はシスター・アレッサンドラ・スメリ、局長がモンセニョール・アントニー・エポ。シスター・アレッサンドラはサレジアンシスターで、モンセニョール・アントニーは国務省で長く働いてきたナイジェリア出身の方です。また特に難民問題担当の局長として、スカラブリーニ会のファビオ・バッジョ師も、長年こちらで働かれています。上の写真の向かって一番左がバッジョ師、一番右が、アントニー師。ちなみに国際カリタスは同省の管轄下にあるので、立場上、わたしはしばしばお会いしている方々です。

同省ではまず、チェルニー枢機卿から総合人間開発という用語はいったい何を含んで、何を意味しているのかのお話がありました。キリストがもたらした豊かな命にすべての人が与ることができるように、経済的な発展だけではなく、十字架に根差した自己奉献による人間の発展を目指している。環境破壊、失業、搾取、人道的危機、貧困、人権の阻害、暴力、戦争などなど、人間の発展を妨げる要素を取り除くためのそれぞれの教区での取り組みを、同省では支援していきたい、という旨のお話でした。

司教団からは、まずわたしが代表して概要以下のような報告をしました。

司教協議会は社会の中にあって時のしるしをもみ取り教会の預言者的役割を果たすため、社会司教委員会を設置している。そこには難民移住移動者委員会、カリタスジャパン、正義と平和協議会、部落差別人権委員会、こどもと女性の権利擁護デスク、HIV/AIDSデスク、「ラウダート・シ」デスクが設けられ、それぞれの課題に取り組んでいる。今般、聖座ではこういった委員会が一つになったが、個別の課題への取り組みはどういう風に考えられ、また地域教会の諸委員会との関係はどうなっているのか知りたい。

これに対して同省からは、日本の教会の様々な社会的課題への取り組みを評価する言葉と、同時にそれぞれの地域教会にはそれぞれユニークな社会的課題があるのだから、司教協議会の社会系諸委員会はバチカンの出先機関ではないので、バチカンのようにそれぞれの委員会を消滅させて同省のように一つにする必要はないこと、また以前と同じようにそれぞれの課題の担当者が同省にはおり、以前の諸評議会が取り組んできた課題には同省が全体として取り組んでいるので、問題があれば遠慮せずに同省に相談してほしい旨の回答がありました。

また加えて那覇教区のウェイン司教様からは、沖縄の基地問題を取り上げて、外国軍隊が恒久的な基地を設けてほかの国の中に存在し続けていることの倫理性についての問いかけがあり、同省としても今後の検討課題とすることを承知してくださいました。

Img_20240514_093544641_hdr

聖カリスト宮殿がどんなところか、二つ上の写真では分かりにくいので、同じ地点から反対側を撮影した写真が上です。アドリミナ期間中ではなく、先週の国際カリタスの会議の時の写真です。はっきりと映ってませんが某国の大統領夫人が、某省を訪問しに訪れた時の模様です。

(この項、続きます。「アドリミナを振り返って:その6」へ

 

 

| |

« 週刊大司教第167回:聖霊降臨の主日B | トップページ | アドリミナを振り返って:その6 »

アドリミナ」カテゴリの記事