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2024年5月27日 (月)

アドリミナを振り返って:その7

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アドリミナの振り返りの7回目、訪問時の三日目の出来事です。

三日目となる4月10日(水)は、水曜日ですから、本来は一般謁見がある日です。これまた従来ですと、この日の午前中には予定を入れないで、アドリミナ訪問中の司教は一般謁見に参加していました。ここでも教皇様に直接個人的にご挨拶できる機会だからです。しかし今回は、すでに触れたように福音宣教省が予定を組んでくださったため、無慈悲にも、この日も朝8時半から、省庁訪問が組み込まれていました。

実はこの日の一般謁見では、日本聖書協会が、教皇様に聖書を献呈(こちらのリンク)することになっており、当初は私も立ち会う予定でした。献上する聖書は、聖書協会共同訳の大型の講壇用聖書です。日本ではすでにこういった大型本の装丁ができなくなっており、国内で販売しているものについてもオランダの専門家にお願いしていますが、教皇様への献呈聖書はその専門家による特別装丁です。その制作過程はビデオになっています。(下のビデオです)。

私がこれに関わる理由は、日本聖書協会の理事会には長年にわたりカトリック教会から司教が理事として参加させていただいており、現在私が理事として加わり、同時に聖書協会の副理事長を拝命しています。そこで今回のアドリミナに合わせて、日本聖書協会では総主事の具志堅師がローマに渡り、一般謁見の際に私と一緒に教皇様にこの聖書を献呈しようと計画しておりました。

ところが司教たちはその日の朝から他の省庁訪問が入ってしまい、私も一般謁見に同行できなくなったため、急遽、聖書協会の評議員でもある司教協議会の川口事務局長に同行していただくことにして、教皇庁の担当部署にお願いの手紙を出しました。その結果、一般謁見の際に一番前の列に座って、教皇様と数分面談することを許す旨を記した入場券が届き、無事に聖書を献呈することができました。

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ケースに入った聖書をお渡しするだけのつもりでしたが、教皇様が開いて手渡すように求められ、さらにじっくりと中まで目を通されたとのことです。後で触れますが、この週の金曜日に教皇様とお会いした際に、この聖書について尋ねたところ、聖書の翻訳は大切な仕事だから力を入れるようにとの言葉をいただきました。(上の写真は聖書協会プレスリリースから)

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さて、この水曜日の省庁訪問は、朝8時半からの典礼秘跡省で始まりました。宿舎から、サンピエトロ広場の左手にある典礼秘跡省まで歩いて行く朝の道には、一般謁見に入るための人で、長大な列ができていました。(写真上は典礼秘跡省の入り口)

典礼秘跡省は、長官がアーサー・ローチェ枢機卿。前回2015年の時には、同省の次官だった方です。

典礼秘跡省では、典礼委員長の白浜司教様が、日本での典礼書の翻訳について、同省の迅速な対応への感謝とともに、進捗状況を報告し、新しく出版された日本語のミサ典書をローチェ枢機卿様に献呈しました。(下の写真)

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その後意見交換となりました。どれもお互いの考えを述べるのみで、この場で結論の出るような内容ではありませんが、例えば以下のような話題でした。デジタルでの典礼書や時課の典礼(教会の祈り)の出版について、デジタルが良いのか印刷物が良いのかについての互いの考え。世界の多くの教区で司祭不在の教会が増える中で、集会祭儀と聖体拝領の関係についてどう考えるか。第二バチカン公会議が望んだ典礼刷新を、地域教会で具体的にどう実現していくのか。

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またこの中で、司教団が望んでいる「日本205福者殉教者」の名称を、殉教者の中に含まれている日本人で最初の司祭であるセバスチャン木村を筆頭にして、「セバスチャン木村と同志殉教者」に変更することに関して、意見を交換した結果、典礼秘跡省としては問題はないので、しかるべく関係省庁に諮ることで同意しました。

前回や前々回のアドリミナの際には、典礼書の翻訳について今以上に絶大な権限を典礼秘跡省が与えられていたため、ラテン語原文から日本語への翻訳について、日本側の翻訳原案に対して訂正を求めてかなり細かい指摘を、それも厳しく受けたことを思うと、今回の訪問は、お互いの考えを十分に述べる機会として、まだまだこれから当面の間継続する典礼書などの日本語への翻訳作業に関して、明るい見通しを抱かせる面談となりました。

典礼については、日本語への翻訳が常に重要な課題として存在しています。それぞれの地域の教会と、典礼秘跡省がしっかりと連携して作業を迅速に進めるためにも、このように関係者が定期的に出会い意見を交換することは不可欠であることを、改めて確認しました。メールや手紙のやり取りだけでは、物事はなかなか進みません。

(この項、続きます。「アドリミナを振り返って:その8」へ

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