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2025年1月 1日 (水)

2025年元日:神の母聖マリア@東京カテドラル

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みなさま、新年明けましておめでとうございます。

2025年が、神様の祝福に満ちあふれ、ともに歩みを力強く続ける一年となりますように。

1月1日は、教会にとっては神の母聖マリアの祝日であり、同時に世界平和の日でもあります。教皇様の今年の世界平和の日のメッセージは、こちらのリンクの中央協議会サイトをご覧ください。今年のメッセージのテーマは、「わたしたちの負い目をゆるしてください、あなたの平和をお与えください」です。

メッセージにおいて教皇様は、国家間の債務の軽減、死刑の廃止を含むいのちの尊厳を守ること、武力のための資金の一部を飢餓などの軽減のために使うことなど、具体的な提案をされています。このテーマと呼びかけに合わせて国際カリタスも、「国際的な債務を希望へと変えよう」と呼びかけ、25年前の大聖年のように、国際的な債務削減キャンペーンを始めました。このキャンペーンは、英語で「Turn Debt into Hope"と呼ばれています。リンク先は英語ですが、今後カリタスジャパンなどからも呼びかけが行われることになろうかと思います。

国際カリタスの呼びかけの冒頭には、次のように記されています。「世界は緊急でありながら静かに進行する債務危機に直面しています。100 か国以上が不当で持続不可能な公的債務に苦しんでおり、その 65% は民間からの貸し付けで、開発と気候変動対策を完全に妨げているわけではないにしても、減速させています。低所得国では、60% が債務危機に近づいており、人々の将来への投資能力が制限されています。借金返済が医療と教育への支出を上回っているため、33 億人が重要なサービスを受けられず、貧困と不平等がさらに深刻化しています」

このキャンペーンは具体的な署名を求めるものですが、詳細は日本語訳をお待ちください。英語で大丈夫な方は、リンク先から署名へと進んでいただけると幸いです。

以下、本日午前10時に東京カテドラル聖マリア大聖堂で捧げられた神の母聖マリアの祝日ミサの説教原稿です。

神の母聖マリア
東京カテドラル聖マリア大聖堂
2025年1月1日

新しい年、2025年の始まりにあたり、お喜びを申し上げます。

世間ではすでにクリスマスのお祝いはすんだことなのでしょうが、教会は主イエスの降誕をまだ祝い続けおり、それはご公現から主の洗礼まで続きます。主の降誕の出来事から一週間目にあたる本日一月一日を、教会は神の母聖マリアの祝日と定めています。新しい一年のカレンダーのはじめの日に聖母を記念することで、わたしたちの信仰生活においていかに聖母マリアが重要な存在であるのかを、教会は示そうとしています。

天使ガブリエルによる救い主の母となるという驚くべきお告げの出来事に始まって、ベトレヘムへの旅路、そして宿すら見つからない中での出産。その晩の暗闇の中に輝く光。天使たちがほめたたえる中で、新しいいのちの誕生を祝うために真っ先に駆けつけた貧しい羊飼いたち。聖書はこれらの出来事を記していますが、聖母マリアにとってみれば、人生において初めて経験する驚愕の出来事の連続であり、大きな混乱の中にあったことだと思います。

人類の救い主の母となることを告げられたそのときから、また神の御言葉を胎内に宿したそのときから、さらに神のひとり子の母となったそのときから、マリアの心は様々に乱れ、思い悩みも様々にあったことだと思います。しかしルカ福音は、マリアがそういった一連の出来事に惑わされることなく、すべてを心に納めて、それらの出来事によって神が望まれることは何であるのかを思い巡らし続けていたと伝えます。

「教会の福音宣教の活動には、マリアという生き方があります」と使徒的勧告「福音の喜び」に記された教皇フランシスコは、「マリアは、信仰に生き、信仰のうちに歩まれる、信じる女性です。教会にとって、マリアの比類なき信仰の旅路は変わることのない手引きです」と指摘されます。

激しく変化を続ける社会を目前にして、わたしたちはどうしても一つ一つの出来事に突き動かされて、一喜一憂し、直面する現実に対して時に深く洞察することもなく反応してしまったりします。個人としてだけではなく、社会全体もそのように反応し、極端な言説や行動が見受けられるようになりました。そんな時代に生きているからこそ、わたしたちは聖母マリアが、起こっている出来事を心に納め、神の意思と計画を思い巡らしていたその姿勢に習いたいと思います。

同時に聖母マリアは、単なる模範ではなく、わたしたち教会の母でもあり、歩みをともにしてくださる方でもあります。

始まったばかりの聖年の大勅書「希望は欺かない」において、聖母は、「わたしたちの母、希望の母」と宣言された教皇様は、「民間の信心の中で、聖なるおとめマリアが「海の星(ステラ・マリス)」と呼ばれているのは偶然ではありません。この称号は、人生の荒波の中にあるわたしたちを、神の母は助けに来てくださり、支えてくださり、信頼をもって希望し続けるよう招いてくださるという、確かな希望を表しています」と記しておられます

いのちという賜物を与えてくださった神は、人となられた神の御言葉、暗闇に輝く一筋の光として、わたしたちの希望の源ですが、聖母マリアは、その御言葉である御子イエスと歩みをともにされ、わたしたち教会と歩みをともにされる希望の母であります。

新しい年の初めにあたり、聖母が信仰のうちに神のみ旨を求め続けながらイエスと歩みをともにされたように、わたしたちも主の示される道を祈りのうちに求めながら、主とともに歩み、いのちの希望を掲げながら歩む決意を新たにしたいと思います。

さて教会は、新年の第一日目を「世界平和の日」と定めています。かつて1968年、ベトナム戦争の激化という時代を背景に、パウロ六世が定められた平和のための祈りの日であります。

今日、世界の平和を考える時、私たちは、もちろんウクライナの現実やガザをはじめとした聖地の惨状、姉妹教会であるミャンマーの現状などを忘れることはできませんし、日本近隣を含め世界各地で見られる政治的軍事的緊張状態や、近年とどまることなく頻発しまた継続している様々な地域紛争や極度に暴力的な事件のことを考えざるを得ません。それだけにとどまらず、全く報道されることがないためにわたしたちが知ることのない暴力的な出来事が、世界各地に存在していることを思うとき、その混乱に巻き込まれ恐れと悲しみの中にある多くの方々、とりわけ子どもたちのことを思わずにはいられません。

新しい一年の始めにあたり、希望の見えない暗闇の中で絶望にとらわれ、様々な形態の暴力に直面し、いのちの危機から抜け出すことのできない多くの人たちに、私たちの心を向けたいと思います。

新しい一年の始めにあたりに、日本をはじめとして、この地域の各国の指導者たちが、さらには世界の国々の指導者たちが、対立と武力による解決ではなく、対話のうちに緊張を緩和する道を見いだし、さらには相互の信頼を回復する政策を率先してとられることを期待したいと思います。 新しい一年の始めにあたり、神からの賜物であるいのちが、その始めから終わりまで守られ、神の似姿としての尊厳が等しく大切にされる世界の実現に、一歩でも近づくように祈ります。

新しい一年の始めにあたり、様々な理由から国境を越えて移動する多くの人に心を向けたいと思います。人が移動し続ける理由は数限りなくありますが、そこには自分が積極的には望まない理由で移動をせざるを得なくなる人たちも多く存在しています。誰一人として忘れられてしまってかまわない人はいません。いのちはすべて神からの賜物です。

教皇様は世界平和の日のメッセージを発表されています。今年は「わたしたちの負い目をゆるしてください、あなたの平和をお与えください」がテーマです。

メッセージ冒頭で教皇様は、「私は特に、過去のあやまちによって重荷を負わされ、他者の裁きによって攻撃され、自分の人生にかすかな希望さえ見いだせないと感じている人たちのことを考えている」と記され、始まったばかりの「希望」をテーマとした聖年において、様々な意味での周辺部に追いやられ排除されている多くの人へ心を向けるよう招かれます。

その上で教皇様は、聖ヨハネパウロ二世教皇の指摘された「構造的な罪」を引用しながら、世界で起きている人間の尊厳をおとしめている様々な出来事に対しては、誰かの責任を糾弾するのではなく、人類全体が何らかの責任を感じ、ともに協力しながら行動するよう求めておられます。

メッセージの終わりで教皇様は、国家間の債務の軽減、いのちの尊厳を守ること、武力のための資金の一部を飢餓などの軽減のために使うことなど、具体的な提案をされています。国際カリタスも、「国際的な債務を希望へと変えよう」と呼びかけ、25年前の大聖年のように、国際的な債務削減キャンペーンを始めました。

平和を実現する道を歩まれたイエスの旅路に、聖母マリアが信仰のうちに寄り添ったように、私たちも神が大切にされ愛を注がれる一人一人のいのちの旅路に寄り添うことを心がけましょう。希望の母である聖母マリアのうちに満ちあふれる母の愛に満たされ、主とともに、聖母とともに、歩みを進めて参りましょう。

 

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