カテゴリー「東日本大震災」の73件の記事

2021年3月31日 (水)

CTVCの活動に感謝

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3月31日、年度末です。東京の桜は散り始めており、復活祭まで持つかどうか微妙となりました。

さて、3月31日をもって、10年間活動を続けてきた東京教区のCTVC(カトリック東京ボランティアセンター)が、その活動に幕を下ろします。東日本大震災発生直後、首都圏からの支援活動を円滑に行うために発足したセンターは、日本の司教団が、震災から10年となるこの3月でいわゆる「オールジャパン」の支援体制を解除することに伴い、終了することになりました。

わたしの手元には、10年前の4月22日付けで、当時の東京教区補佐司教であった幸田司教様から送付されてきた、CTVC設立趣意書のメールが残っています。そこには次のように記されています。

「東京教区内では、これまで真生会館学生センターとJLMM-日本カトリック信徒宣教者会などが窓口になり、仙台教区サポートセンターを通して被災地にボランティアを派遣してきました。このような活動をひとつにまとめ、教区として、また、ひとつの教会として力を結集させ被災地を支援していくため、2011年4月24日の復活祭の主日に、「カトリック東京ボランティアセンター(CTVC)」を設立いたします」

それから10年。六本木のフランシスコ会聖ヨゼフ修道院に一室をお借りして続けられてきた活動は、幸田司教様が責任者を務め、その後は福島のカリタス南相馬設立につながりました。CTVCが終了しても、東北への支援が終わるわけではありません。教皇様が東京での被災者の集いで指摘されたように、「息の長い」かかわりが必要です。幸田司教様は、この数年は南相馬の住人となり、現地からの支援活動をカリタス南相馬のスタッフと共に続けておられます。東京教区としては今後、それぞれの場から、すでにある現地との繋がりや、カリタス南相馬を通じた繋がりを持って、東北とのかかわりを持ち続けたいと思います。

これまでの10年間、CTVCの活動に関わってくださった皆さん、特に事務局を担当してくださった皆さん、またその活動に加わったり支援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。10年の活動は教区に多くの宝を生み出したと思います。その宝をさらに育てていくことが出来るように、努めたいと思います。

同様に、わたしが担当司教でもあった司教協議会の東日本大震災復興支援室も、その活動を終えます。もっぱら活動の調整作業でしたが、なかでも関係者間の情報共有のための大阪教区の支援で立ち上げたメーリングリストは、今日までに8700通ほどのメールで情報が共有されました。毎日、各地のベースからは活動報告が送付され、それは今日まで続いてきました。そのメーリングリストも、今日で閉鎖され、仙台教区が新しく立ち上げたネットワークに引き継がれていきます。

この10年、関わってくださった皆さんに、感謝します。

 

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2020年3月11日 (水)

3月11日、あの日から9年目にあたって

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3.11追悼の日のメッセージ
2020年3月11日
カトリック東京大司教区
大司教 菊地功

「展望と希望を回復させてくれる友人や兄弟姉妹との出会いが不可欠です。」
昨年11月に日本を訪問された教皇フランシスコが、東北の被災地の方々との集いで語られた言葉です。

2011年3月11日の「あの日」から、今年で9年という時間が経過しました。東日本大震災からの復興への取り組みは続いており、日本のカトリック教会の支援の取り組みも、今日から10年目に入ります。

あらためてこの大震災で生命を落とされた方々と、それ以降の様々な状況の中で亡くなられた方々の、永遠の安息をお祈りいたします。

9年前、復興支援の活動を始めたときには、いまの日本の国力と技術力を持ってすれば、数年のうちに被災地は見事に復活するだろうと、単純に考えていました。

しかし復興の歩みとはそんな単純なものではなく、単に資金と技術をつぎ込んで、インフラを元に戻したり整えたりすることだけで、復興は成し遂げられないのだと言うことを、わたしたちは体験から学んできました。

この9年間の東北の方々との歩みが、「復興」とは「元に戻す」ことではなくて、「新たな希望を生み出し歩み続ける」ことだと、わたしたちに教えています。

教皇フランシスコは、日本訪問を計画されていたときから、ぜひとも東北の被災者の方々と会いたいという希望を表明しておられました。時間的制約もあり、残念ながら東北の地に足を運んでいただくことはできませんでしたが、東京において東北の被災地の方々と集いを開き、教会との関わりがある方が主ではありましたが、被災された方々、支援の中で道をともに歩んでおられる方々と出会っていただきました。

教皇は、羽田空港に到着した直後、教皇庁大使館で日本の司教団と会い、東北の被災者との集いに関連してこう述べておられました
「今なお続く彼らの苦しみを見ると、人として、そしてキリスト信者として、わたしたちに課された義務をはっきり自覚させられます。身体や心に苦しみを抱えている人を助け、希望といやしと和解という福音のメッセージを、すべての人に伝えるという義務です」

そして東京において開催された集いでは、こう言われました。
「食料、衣服、安全な場所といった必需品がなければ、尊厳ある生活を送ることはできません。生活再建を果たすには最低限必要なものがあり、そのために地域コミュニティの支援と援助を受ける必要があるのです。一人で「復興」できる人はどこにもいません。だれも一人では再出発できません。町の復興を助ける人だけでなく、展望と希望を回復させてくれる友人や兄弟姉妹との出会いが不可欠です」

その上で、現代社会に蔓延する利己主義と無関心を「悪」と指摘した上で、「家族の一人が苦しめば家族全員がともに苦しむという自覚をもてるよう、力を合わせることが急務です」と呼びかけられました。

確かに災害などからの復興のためには、衣・食・住の充足は不可欠な要素であり、人間のいのちを守るために忘れてはならない要素であります。しかしながら人間は、それだけでは生きていけないのです。人間が豊かに生きていくために必要なのは、教皇が不可欠だと言われた、「展望と希望を回復させてくれる友人や兄弟姉妹との出会い」であります。

衣・食・住は、外から持ってくることができるものです。しかし希望と展望は、誰かが外から持ってきて与えることのできるものではありません。それは人の心の中から生み出されるものであり、そのためには、「友人や兄弟姉妹との出会い」が不可欠です。

カトリック教会の復興支援活動は、教会が災害の前から、そして災害の間にも、また災害の後にも、その地域の一員として存在していることから、つねに地域と密着して行われてきました。教会は、どこからかやってきて去って行く存在ではなく、ともに道を歩みながら、友として、兄弟姉妹として、災害から復興する道を歩んでいる方々と出会い、その心に希望と展望が生み出されるように、きずなを深めようとしてきました。

同時に、教会の活動は、全世界に広がる教会のネットワークを通じて、世界中からの祈りによって支えられています。教会の活動は徹底的にローカルでありながら、祈りを通じてグローバルであります。

カトリック教会は、教皇フランシスコの言葉を心に刻みながら、東北の方々を家族の一員として互いに支え合う活動を、これからも継続してまいります。

復興庁の統計によれば、今年の1月の段階で、いまだに4万8千人を超える方々が避難生活を送られているといいます。これほど多くの方が、普通の生活を取り戻すことができない状態が続いていることを、私たちは心にとめなくてはなりません。

とりわけ、原子力発電所事故の影響が残る福島県内では、復興の歩みにはさらなる時間が必要であり、公式の統計には表れない避難者の方々も全国に多数おられると推測されます。人生の道筋が予想もしなかった困難な道となってしまった多くの方々が、忘れ去られることのないように、カトリック教会のネットワークを生かしながら、ともに歩み続けたいと思います。

大震災から9年となりましたが、10年目以降の関わりも視野に入れながら、継続してともに道を歩み続けましょう。

東日本大震災からの復興の道を歩んでおられるすべての方々に、そして復興のために日夜活動されている多くの方々の上に、いつくしみと愛に満ちた神の祝福があるように、お祈りいたします。

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2019年4月26日 (金)

福島とともに

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復活の月曜日、4月22日の午後2時半から、福島県の南相馬市にある東京カトリックボランティアセンター(CTVC、責任者は幸田名誉司教)の支援拠点であるカリタス南相馬において、一般社団法人カリタス南相馬の設立社員総会が開催され、新しい法人が正式に立ち上がりました。

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カトリック原町教会の敷地内にあるカリタス南相馬は、震災発生後から福島県内で様々な活動を展開してきたCTVCが、これからの長期的支援活動の拠点としてカリタスジャパンの援助の元に設置したもので、様々な女子修道会や地元などの団体からも人的な協力と支援をいただいています。

現在のカリタス南相馬所長は、聖心会のシスター畠中。これまでも長期にわたって、南相馬での支援活動を率いてこられました。

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司教団は、2021年の3月末まで、全国の教会をあげての復興支援活動を継続することにしています。しかし同時に、これまでの活動を通じて、それぞれの教区や団体が築き上げた地元の方々との深い絆や関係もありますし、また現実を見るならば、地域によってはこれからもまだまだ支援活動が必要な場もあります。

とりわけ福島にあっては、主に浜通り(沿岸部)を中心に、震災と原発事故の影響はなくなったわけではなく、特に原発事故によってもたらされた地域共同体への影響には深刻なものがあります。この地にとどまる選択をした人、避難先から戻られた人、現在も避難生活を続ける人。それまでごく普通の生活を営んできた人たちは、震災とそれに伴う原発事故によって『普通』を失い、予期せぬ道を歩み始め、いまだその『普通』を回復できてはいません。本来であればそのような状況で生活しているはずはない、すなわち自分たちに責任がないにもかかわらず、今どういう生き方をしているかで、様々な評価をされ、いらぬプレシャーを受けている方々もおられます。地域の共同体は、分断されて、それによって傷ついている方々が多くおられます。

そういう、外部要因によって予期せぬ生活に引きずり込まれた方々が、普通に生活ができるようになるまでは、やはり一緒に歩みをともにすることを止めるわけには行かない。そう判断して、10年後以降も歩みをともにする方法を模索しながら、その拠点として、カリタス南相馬を続けていくことにしました。とはいえ、東京教区だけでその活動を支えることは難しく、カリタスジャパンからの継続した資金提供もまた難しく、さらには、地元である仙台教区の意向や将来計画もある中で、確実な歩みを続けるためにとCTVCに関わる方々が検討を続けた結論が、法人化でありました。

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今般の一般社団法人化に当たり、26名の方が設立時社員として名を連ね、私も幸田司教様とともに、社員に加わりました。また設立社員総会で、理事も承認され、責任者である代表理事には幸田名誉司教が就任することになりました。なお仙台教区の平賀司教様も理事に加わっておられます。

今後、地元の方々や行政とも連携しながら、長期的な歩みを続けていこうとするカリタス南相馬の活動にご理解とご支援を頂けましたら、幸いです。

なお、将来的にはCTVCを東京教区の災害ボランティア活動拠点として発展させていきたいと考えていますが、ちょうど、カリタスジャパンが東日本大震災を教訓に災害対応マニュアルを作成中で、それに基づいてのこれからの備えなどを考える担当に、豊島神父様を任命したところですので、今後豊島神父様を中心に、整備していきたいと願っています。

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さて、福島つながりで4月25日の夕方、きらきら星ネットの方々(写真上)が、教皇謁見の報告のために教区本部を訪ねてくださいました。きらきら星ネットは、福島の原発事故以降、避難者、被災者を支援するための市民によるグループです。今回はきらきら星ネットが支援を続けている自主避難をしている方々を代表して、高校生の鴨下全生さんが、スタッフとご両親とともにバチカンで教皇様に謁見し、避難生活の実情を訴えたもので、一般紙にも報道されました。

事故があったからこそ避難することを選択したのに、避難先ではいじめに遭ったり、福島から来たことを隠さなくてはならなくなったりと、様々な困難に直面してきた鴨下さんは、教皇様に、原発事故が引き起こした地域共同体の分断とそれに伴う苦しみを訴え、教皇様に是非とも福島へ来てほしいと訴えました。

事故によって被害を受け、助けを求めて避難したところで差別されいじめられる。なんとも理不尽なことだと思います。原発事故によって分断された福島の方々の、心に負っている重荷は、忘れ去られて良いものではありません。

神が与えられた賜物である人間のいのち。そのすべてを愛され大切にされ、そしてその一つ一つが与えられた使命を十全に果たすことができる社会の実現。それを神様は望まれているのではないでしょうか。

教会全体として、様々なレベルでの、歩みをともにする活動を続けていくことができればと思います。

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2017年2月17日 (金)

東日本大震災復興支援の会議@仙台教区本部

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今日は一日、仙台のカテドラルである元寺小路教会で、東日本大震災の復興支援に関わる二つの会議です。午前中には、仙台教区内各地に開設されているベース関係者の会議。

宮古、大槌、釜石、大船渡、米川、石巻、南相馬、もみの木(いわき)にボランティアベースが開設されており、その代表が情報交換のために定期的に開いている会議です。今日は13名の方が参加。それに加えて、全国からの支援に関わっている関係者として、長崎、大阪、東京の教会管区から関係者。もちろん仙台教区のサポートセンターやカリタスジャパンからも関係者が参加しています。

私はカリタスジャパンの責任者としてではなく、司教団の東日本大震災復興支援活動(いわゆるオールジャパン体制)の責任者として参加していますが、それ以外にも、仙台の平賀司教、高松の諏訪司教、東京の幸田司教の4司教も参加しています。

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日本のカトリック司教団は、先の司教総会で、現在のような全国の教会からの復興支援活動を、2021年の3月まで継続することを決めていますが、各地のベースでは、それぞれの地域の事情などに応じて、今後、その活動内容が変化してくることが避けられないと思います。NPO法人として活動を拡大するところもあれば、縮小していくところもあるでしょう。拡大するにしろ縮小するにしろ、それぞれは地元の方々との関わりの中で、たとえば地元の方に引き継いでいったり、地元の方の協力を得ながら拡大していくなど、地元に根ざした地域との関わりを深めた活動に変化していかなくてはなりません。その中で、教会との関わりをどうしていくのかも、考慮するべき課題かと思います。なんといってもカリタスの活動は、教会の愛の奉仕として、教会の重要な本質的要素の一つであることを忘れるわけにはいきませんから。

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2016年5月 9日 (月)

熊本地震、カリタスのボランティア募集開始

カトリック福岡教区のカリタス福岡・熊本支援センターから、本日よりボランティアの受付をはじめると告知がありました。なおボランティアの拠点(ベース)は熊本県の菊池教会に設置されました。福岡教区のホームページのこのリンクをご覧ください。

なお同ホームページで公開されている内容の一部、「活動内容」と「参加条件」を転載します。必ず上のリンクをご覧の上、同ホームページから、問い合わせ先や、また募集要項のリンクをご覧になり、申し込みの流れなどを確認くださいますようにお願いします。(以下福岡教区ホームページから一部を転載)

【活動内容】
現地でのニーズは場所によって様々です。また刻一刻と状況が変化していますので、ボランティアが到着された時点でもニーズが変化します。状況に応じて柔軟に対応できることが望まれます。
また、活動内容は専門職・技術が活かせない場合もあります。
主な活動内容
① 避難所での支援物資の仕分け、分配、誘導、炊き出し
② 地域の片付け
③ ニーズ調査

【参加条件】
☆高校生以上(未成年者は保護者の同意が必要です)
☆活動開始までに必ず地元の社会福祉協議会でボランティア保険(天災タイプ)にご加入ください。
☆期間中はセンター(くまセン)に宿泊していただきます。
☆センターまでの移動時間を含めず、朝から夕方まで活動できる日が一日以上あること。原則6泊7日まで。長期ボランティアをご希望の方はお問い合わせください。

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2016年2月25日 (木)

東日本大震災から5年を迎えるにあたって

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東日本大震災発生からまもなく3月11日で5年になります。新潟教区の小教区に昨日付で配布した、お祈りの呼びかけ文を、ここにも掲載します。

東日本大震災の発生から5年を迎えるにあたって

新潟教区の皆様

 5年という時間は、ある人にとってはあっという間に過ぎ去った時間であり、またある人にとっては耐えがたいほどの長い時間であったことだと思います。巨大な地震と津波が、主に東北の地を襲った2011年3月11日から、まもなく5年となります。被災地において復興の道を毎日歩んでおられる多くの方々にとって、5年という時間は非常に長い時間であったと思います。あらためてこの大災害で生命を落とされた方々と、その後の復興の過程で亡くなられた方々の永遠の安息をお祈り申し上げます。

 大震災発生当時、5年もすれば日常を取り戻しているに違いない。わたし自身そう思っていました。しかし、被災地における復興の歩みは、本当にゆっくりです。原子力発電所の事故の影響が残る福島県内では、将来を見通すことが難しい状況が今でも続いています。帰還が可能だという地域でも、それは一人だけの問題ではなく地域共同体の問題ですから、以前のような普通の生活を取り戻すには、まだまだ時間が必要です。復興庁の統計によれば、今年の1月末の段階で被災地からの避難生活を送っている方々の総数は、多少減少しているものの、いまだに17万人を超えるといいます。

 日本のカトリック教会は、一昨年の司教総会で、2017年までの全国的な復興支援活動の継続を決めていますが、仙台教区が中心となって、沿岸部を中心に設置されているボランティアベースや、福島における諸活動の現場からは、少なくとも大震災発生10年までは教会は被災地とともに歩むという決意が表明されています。司教団も、その方向で今後検討をすることになります。これまでの5年の歩みを通じて培われた全国の教会と被災地の教会のつながりと、それを通じて生まれている地元の方々との『絆』を、これからも大切にしていきたいと思います。

 新潟教区では、カリタス担当の町田正師(寺尾教会)が中心になって、教区全体の様々な支援活動の情報とりまとめを行っております。これからも、是非、それぞれの地域で可能な復興支援活動を続けてくださるようにお願いいたします。

 さて、5年目に当たる3月11日は週日ですので、その直後の日曜日である3月13日に、新潟教区内の小教区・修道院のミサにおいて、東日本大震災で亡くなられた方々の永遠の安息のために、また被災地の復興のためにお祈りくださるようにお願い申し上げます。
 福音に照らされた希望の光が、被災の地にあって輝きますように。

2016年2月24日

カトリック新潟教区司教
菊地功

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2015年5月10日 (日)

震災のために祈る集まり@青山教会(新潟市)

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今日の日曜日、新潟教会の青年たちが中心となって、東日本大震災の犠牲者追悼と被災者のために祈るミサを計画してくれました。ミサの会場は、教区の青年担当でもある坂本神父が主任を務める新潟市内の青山教会。せっかくの企画なので、小教区の朝9時の主日ミサで小教区の方々と一緒に祈るミサとなりました。

青山教会の信徒だけではなく市内の他教会からも参加があり、青山の聖堂はいっぱいでした。ミサはわたしが司式と説教をし、坂本神父と共同司式。聖書朗読や共同祈願の先唱、オルガンの伴奏と侍者も、すべて青年たちが担当してくれました。

青年たちが手書きで作成した趣意書にも記されていましたが、どのような災害であっても紛争であっても、巻き込まれた被災者は、時間が経過するにつれ、自分たちが置き去りにされてしまうと言う感覚を覚えてしまいます。特に将来に関する明確な展望が開けていない場合、将来への不安と相まって、物理的に関わる人が少なくなる現実が、その不安を倍増させます。

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今年の四旬節灰の水曜日の「聖書と典礼」コラムにも書いたことですが、私たちは時間の経過と共に感情の高ぶりが収まると、災害などが発生した当初の高揚した感情がなくなり、被災地の多くの方々の存在へ思いをはせることが少なくなってしまいます。その間にも、自らの感情を高揚させる他の出来事が起こってしまうことが多いのと、同時に被災地に住む人と、必ずしも個人的な人間関係が構築されるわけでもないので、面識がない人たちとの関係を持続させることが難しいからです。そのため、わたしがカリタスの仕事でこの20年の間たびたび訪れた世界の災害や紛争の現場では、「忘れられてしまった」という絶望感にとらわれる多くの方が残されてしまうのです。

物理的に長期にわたって関わり続けることは難しいですし、個人的な関係と行ってもそんなに簡単に構築できるわけでもありません。そうではあるけれど、なんとか災害に遭われた方々や紛争に巻き込まれた方々に、私たちは忘れてはいないのだという意志を明確に示す行動をとることは大切なことであると思います。その意味で、今回の新潟の青年たちの企画に、意味があることですから、その取り組みに感謝いたします。

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カリタスジャパンは仙台教区を支えながら、仙台教区と、他の教区が運営するボランティアベースを通じた東日本大震災の被災者支援をこれからも続けていきます。国内の皆様からいただいた募金と、海外から寄せられている募金を計画的に活用し、長期間にわたる被災者支援を目に見える形で続けていきます。行政機関ではないので、ボランティア団体に出来ることは限られていますが、それぞれのベースが地域の実情に応じて、その地で必要とされていることを地道に拾い上げながら、長期にわたって歩みを共にする姿勢を明確にし続けたいと思います。

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今日はミサ後に、残ってくださった信徒の方向けに、現代世界憲章について30分ほどお話をさせていただきました。主任の坂本神父が、ただの話ではおもしろくないからと、信徒の方に司会をゆだね、質疑の形で行われたので、非常に新鮮にお話しさせていただくことが出来ました。(写真すぐ上)

なお、ネパールでの大地震が先般発生しましたが、これについても国際カリタスがすでに活動を始めています。現地のカリタスネパールと、米国カリタスやカリタスインドが初期活動を行いましたが、今後、カリタスオーストラリアを調整役として、長期にわたる復興支援を行う予定です。お祈りをお願いいたします。東日本大震災の時にはネパールからも支援をいただきました。そのお返しにも務めたいと思います。

火曜日の朝から、四年に一度の国際カリタス総会議がローマで始まります。カリタスジャパンからも代表が二名参加しますが、わたしはカリタスアジアの代表として参加します。今回の総会議では任期満了となるオスカーロドリゲス・マラディアガ枢機卿に代わる新しい総裁が選出される予定です。すでにメディアにリークされていますが、第1の候補者はマニラのタグレ枢機卿。カリタスアジアの昨年の総会で推薦することを決め、水面下で本人と交渉したり、多くの方と意見を交わしてきました。その結果、アジアだけではなく、アフリカや南米などからも票が見込めることから、タグレ枢機卿が選出されることは確実だと見込んでいます。選挙は14日の予定です。

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2015年4月13日 (月)

日本カトリックボランティア連絡協議会@南三陸町

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日本カトリックボランティア連絡協議会(以下「カトボラ」)の第12回総会が、宮城県南三陸町の研修センター「いりやど」を会場に、11日の土曜日と12日の日曜日に開催され、地元と全国から60名を超える方が参加されました。

カトボラは、1978年頃に、「カトリック・ボランティア」について考えようと有志が集まって始まり、1981年3月に、名古屋の愛の実行運動事務局主催で、「第一回カトリックボランティアリーダー交流会」が東京で開催され、いまにつながっています。3年に一度の総会が開催され、私は前々回の新潟大会から、担当司教を務めております。2000年12月には日本カトリック司教協議会の公認団体となり、名称に「日本カトリック」がつくことになりました。

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今回は、2011年3月11日の震災直後から、カトボラ会長の廣岡洋子さんらが中心となって、関西からボランティアを引き連れ支援活動を始め、その後も交流がつづいている南三陸町で行われました。テーマを「痛み・祈り・喜びー災害と共に生きる」として、被災地の方々と歩みをともにする中で、カトリックボランティアの原点を見つめ直すことを目的として開催されました。

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基本的にすべて自発性と無償性で活動を行う団体ですから、若い年代の会員は少なく、今回の会議でも参加者の平均年齢は高かったと思います。しかしその分、活動は徹底した人間関係の構築を基礎にして行うので、一点集中で大きな力を発揮していると感じました。

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それは今回の会場となった南三陸町の、南三陸さんさん商店街での、地元の店舗開設者の方々との交流の深さからも、感じ取ることが出来ました。ボランティアという概念が広く浸透しているいま、「カトボラ」が、カトリック教会のすべてのボランティアを網羅する団体ではありませんが、しかしカトリック教会のとってのボランティアの基本はどこにあるのかをあらためて考えさせる理念を発信できる場であると思います。

さて今回の大会には、仙台教区の平賀司教、小松事務局長も参加してくださり、初日は、教育の現場から、外国人の立場から、そして原発災害被害者の立場から、三名の方の発題があり、その後、地元の小学校の教頭先生や校長先生も交えて、子供たちの現状について、パネルディスカッションが行われました。

日曜日は全体会として参加者が発言し、最後に次回の開催地として大分教区、また会長代行をおくことや、事務局を名古屋から徐々に関西に移設することなどが報告されました。

最後に平賀司教司式で派遣ミサ。私が説教させていただきました。ミサ終了後は、参加者全員、近くの南三陸さんさん商店街に出かけ、昼食を始め様々二時間を過ごして解散。

今回も会長の廣岡さんの年齢を感じさせないダイナミックさに感銘を受けた大会でした。

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2015年3月 8日 (日)

東日本大震災で亡くなられた方のために祈り、また一日も早い復興を祈願する日

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まもなく3月11日で,東日本大震災が発生して4年となります。新潟教区では,本日3月8日の主日を、東日本大震災で亡くなられた方のために祈り、また一日も早い復興を祈願する日として、それぞれの教会や修道院のミサを,この意向で捧げて頂きました。

新潟教会では午後から,青年たちが中心になって祈りの集いが行われたはずです。私は秋田にいて不在でしたので,その集いのために書いたメッセージを掲載します。

東日本大震災発生から四年を迎えて祈る

カトリック新潟教区 司教

菊地功

 あの大震災の日から四度目の3月11日が、まもなく巡ってきます。あの日以降、私たちは幾度にも渡って、すさまじい自然の力である津波の恐ろしさと、人類の英知の結晶であったはずの原子力発電所の夢が崩壊する様を、映像を通じて目の当たりにしました。

 さらには、実際に被災地へ出かけていって、または報道を通じて、避難生活を続ける多くの方々の姿や声に触れ、被災地の現状を痛いほど感じてきました。

 今年二月末の段階で、復興庁の統計によれば、いまだに22万9千人の方々が、避難生活を送り、普通の生活を取り戻すことが出来ずにいます。

 残念ながら、様々な希望的観測とは裏腹に、原子力発電所の事故の収束は、予定通りに進んでいるとは言いがたく、福島のこれからにはまだまだ不透明な部分があります。

 日本のカトリック教会は、被災地が主に仙台教区に集中していることから、発生直後から仙台教区本部にサポートセンターを設置し、仙台教区の平賀司教様を中心として、復興支援活動を行ってきました。全国の教区が、それぞれの力に応じて、出来る範囲での側面支援を続けています。被災地各地に設置されたボランティアベースは、現在では避難生活を続ける方々を中心に、それぞれの地域で生活する方々と歩みをともにする出会いの場を提供するようになってきています。日本のカトリック教会は、まだまだ被災地とともに歩み続ける決意です。

 人間は時間がたつにつれて、記憶を勝手に整理し始めます。起こった出来事をすべて記憶しているわけにはいかないからです。いまの自分の生活の優先事項に合わせて、私たちは過去を取捨選択していくのです。大震災から時間が経過するにつれ、被災地での当事者でない私たち多くは、四年前のあの衝撃を徐々に忘れつつあるように思います。もちろんいつまでも悲しんでいる必要があるなどと言うことではありません。そうではなくて、被災地にあって、いまもなお希望ある未来を生み出そうとして戦っている多くの方々と、心の絆をもってつながり、歩みをともにする姿勢を意識しながら保つことは、大きなエネルギーを生み出すのです。希望は、多くの人の連帯の心からいただいたエネルギーで大きく育っていきます。

 新潟教区からは、東京などのように組織的にボランティアを派遣するようなことはしていませんが、その出来る範囲で、連帯の心を持ち続けたいと思います。どうかこの祈りの集まりを通じて、新潟教区からの連帯と希望のパワーを被災地に送り届けることが出来ますように。一緒に祈り続けましょう。

私は今朝、秋田の聖体奉仕会で、会員と一緒にこの意向でミサを捧げ、祈りの時を共にしました。(写真は今朝のミサ)この数年間、3月の頭の頃には秋田でも山の上で雪の多い聖体奉仕会では、建物が雪に覆われていることが普通だったのですが,今年は全く雪がありません。新潟市内もそうですが、内陸部は以上の大雪なのと,それから全体的に早く(12月に)降雪が始まったのですが、沿岸部の新潟市や秋田市内では,例年よりも雪は少ないのではないかと感じます。

明日は聖園短大の卒業感謝ミサを秋田教会で10時から行い,新潟へ戻ります。

 

 

 

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2015年1月31日 (土)

清心中学3年静修と、仙台サポート会議

さて海外研修からの時差と、帰国したその日に痛めた喉の二つから回復するのに手間取りましたが、何とかなりました。

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先週の木曜日、29日は午後から新潟教会を会場に、新潟清心女子中学3年生の静修。卒業を前に、一日心を落ち着けて、祈りのうちに人生の振り返りをする特別な日です。午後1時から、新潟カトリックセンター二階ホールで、40分ほどお話をさせていただきました。

この中3は昨年末のクリスマス会で、静止聖劇『タブロー』を披露してくれた学年ですが、そのときの主要テーマは『児童問題』。鋭い視点から、新鮮で刺激のある聖劇を見せてくれた学年です。『児童問題』の根底にあるのは、もちろん世界の貧困問題です。そこで、カリタスジャパンが国際カリタスとともにすすめている貧困撲滅キャンペーンについて、お話をさせていただきました。話の後は、生徒たちによる分かち合い。世界の現実を前に、単純に白黒つける情報に流されずに、複雑に絡み合った現実をじっくりと読み解き、人類に共通の善を実現する世界を生み出す努力を続けていってほしいと思います。

貧困問題へのカトリック教会の取り組みの根底は、もちろん神の被造物である一つ一つの生命が等しく尊厳のある生き方が出来る世界の実現ですが、ただしそれは、一般に言う『平等』とは異なっています。教会の発展への考えを一番端的に表しているのは、教皇聖ヨハネパウロ2世の次の言葉でしょう。

「発展とは、富める国が現在享受している生活水準にすべての人を引き上げることではなく、労働を結集してよりふさわしい生活を築き上げること、個々人の尊厳と創造性、そして天職、すなわち神の召し出しにこたえる力を具体的に高めることなのです。(回勅「新しい課題」29)」

神の個々人への『召し出し』の実現を妨げている社会の現実を是正していくことが、貧困撲滅の重要な課題のひとつです。先日の海外研修でのマルクス枢機卿の講演の中にもあったのですが、教皇フランシスコの率いる教会が、世界の現在の主流である経済システムに対して批判的であることから、『共産主義者だ』と批判を受けているが、そうではない。それは資本主義の否定ではなく、いわば『エセ資本主義』の否定であり、教皇フランシスコは『資本主義』を超越したその先にあるシステムを語っている。その目指す先が、この聖ヨハネパウロ2世の言葉に表されているように思います。

もとより、教会と共産主義は、神を信じるものと、神を否定するものとで根本から相容れるところではありませんし、具体的にめざす方向性で共通点があったとしても、根本で一致することは困難です。ですから、教会の現状批判の姿勢に対して、『共産主義者だ』と指弾することは、感情に訴えるだけで、それほど理に適ったことではありません。

現在の『資本主義』を超えたところに教会が求める基準は、これまた次の聖ヨハネパウロ2世の言葉に、端的に記されている連帯を実現する姿勢に導かれた世界の実現であろうと思います。

「新しい『愛の創造力』の時代です。それはただ単に、効果的な援助提供の中に見られるだけでなく、隣人になる能力、苦しむ人と連帯する能力のうちにも見られる創造力であり、辱めを感じさせるような施しではなく、兄弟姉妹としての分かち合いです。(使徒的書簡「新千年期の始めに」50)」

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お話と分かち合いの後、校長先生のお話があり、そして新潟教会聖堂に移って感謝ミサを捧げました。インフルエンザがはやっているため、数名の欠席者がありました。元々この学年は人数が少なく、欠席者もあったため、21名ほどの参加でした。

その日の夜に仙台へ移動。金曜日の午前10時から、仙台の教区本部で、復興支援の会議でした。10時からはボランティアベースなどの担当者が集まって意見交換をする、全ベース会議。今回が19回目とのこと。私など司教は、オブザーバーとして後ろに陣取り、各ベースの現状と課題について聞かせていただきました。

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そして午後1時からは、定例の仙台教区サポート会議。今回で32回目の開催です。カリタスジャパンが国内外からいただいた募金は、仙台教区内のボランティアベースなどを通じた被災者支援活動のために使われています。以前にも記したように、昨年11月の段階で、国内から約8.5億円、国際カリタスから11.2億円の募金を受領し、これまでのほぼ4年間でそのうちから15.2億円ほどを支出しました。『義援金』であるならば、一刻も早く、すべてを被災者に配分するのでしょうが、この募金は、被災者の方々の復興を支援するためのものですから、短期に終わらず、長期に渡って歩みをともにし支えていくために活用します。被災地各地に設けられているボランティアベースによる、たとえば仮設訪問やカフェの運営など、地元の社会福祉協議会や自治会との連携の中で行われる支援活動は、まだまだ継続が必要です。そのために計画性をもって、募金を活用していかなくてはなりません。

昨日の会議では、仙台教区から、いまのような支援活動は、少なくとも震災発生10年までは続けたいという意思表示がありました。ですから今後どのような形で、各ボランティアベースの活動を展開していくのかが、昨日の会議の一番のテーマでありました。

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会議中から仙台は大雪。夕方、新潟へ帰るために仙台駅へ向かう頃は、町中が真っ白な雪に覆われておりました。

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