シノドスの歩みの継続について教皇様の示された道
2021年から24年まで続けられた第16回シノドスについては、昨年10月末の第二会期終了時に採択された最終文書が、教皇様の意向で公式の教皇文書となり、そこに記されていることを、各地方教会で具体化していくことが求められています。
それに伴って、3月15日、バチカンのシノドス事務局は、教皇様から裁可をいただいた文書を全世界の枢機卿・司教・東方典礼司教に対して送付し、今後、2028年10月まで続く、シノドスでの決定事項の実施過程についての概要を示されました。この文書は、3月11日に入院中の教皇様を見舞ったシノドス事務局長のグレッグ枢機卿様に対して、教皇様から許可が出ているとのことです。
以下、その概要を解説します。(なお、英語の本文書は、こちらのリンクから)
この文書は、「ともに歩む教会のため-交わり、参加、そして宣教」をテーマにしたシノドスの実施段階について、どのように進めるかの概要を解説し、それぞれの教区司教、司教協議会、大陸別の司教協議会連盟などの務めを記しています。
2018年9月に発布された教皇様の使徒憲章「司教の交わり( EPISCOPALIS COMMUNIO)」の第7項には、シノドス後にそこで定められたことを教皇の指示に従って全教会が具体化する実施段階についての定めがあり、同じ使徒憲章の19条から21条に具体的な実施要綱が定められています。なおこの使徒憲章は邦訳されていませんが、英語版をこちらのリンク先で読むことができます。今回の文書は、教皇様がシノドスを受けて使徒的勧告を出されず、最終文書をご自分の文書とされたことから(ペトロの後継者の通常の教導権の一部とされた)、即座に同使徒憲章に基づいて実施段階を定める必要があるために、検討され発表されました。
今回の実施要綱の一番のポイントは、この先どうなるかについてです。すなわち教皇様は、今回のシノドスの最終文書を受けて、そこに定められていることを世界中の教会で具体的に実施に移し、その成果を、2028年10月に「バチカンで開催される教会総会(an ecclesial assembly in the Vatican)」で評価し合うこととして、そのため当面は新たなシノドスを行わないというものです。つまり、今回2021年に世界各地の教区から始まったシノドスの道は、2028年10月の教会総会まで続けられることになったということです。
シノドス事務局長のグレック枢機卿様は、同文書に、「シノドスの実施段階とは、単に上からの指示を 「適用」することではなく、むしろ、地域 の文化や共同体の必要にふさわしく適応させながら、最終文書に示された方向性を「受容」するプロセスとして理解されるべきです。同時に、様々に異なる教会の事情を超えてこの受容を調和させながら、教会全体として共に前進することが不可欠です」と記して、世界中のすべての教区での対応を求めています。
その上でグレック枢機卿様は、「実施段階が、これまで取り組んできた人たちを再び関与させ、教会全体の声に耳を傾けることと、シノドス的集会における司牧者の識別によって得られた実りを提示するものとなるようにすることが基本的に重要です。こうして、傾聴段階ですでに開始された対話が継続されます。このプロセスは、司祭、助祭、男女の奉献生活者、信徒の男女で構成されるシノドスチームの働きを必要とし、彼らの司教がそれに歩みをともにします。これらは、地方教会における通常のシノドス的あり方に伴う基本的なツールです」と指摘されます。
各教区、そして各司教協議会は、シノドス事務局に、それぞれのシノドスチームについての情報を登録するように求められています。わたしは司教協議会でもシノドス参加者として、日本のシノドス特別チームを主宰していますので、東京教区でも同じようにチームを結成して、対応していかなくてはなりません。なお日本のシノドス特別チームでは、具体的な日本の教会全体の取り組みについての提案をすでに検討中で、6月に行われる司教総会に報告と提案をすることが昨年末に決まっています。
以上を踏まえて、シノドス事務局は、2028年10月の教会総会に向けて、おおよそ、次のようなプロセスを示しています。
- 2025年3月 :同伴と評価の過程の発表
- 2025年5月 :実施にあたってのガイドラインを含んだ実施過程のための参考文書の発行
- 2025年6月~2026年12月:地方教会とそのグループにおける実施の過程
- 2025年10月24日~26日:シノドスチームと参加団体の聖年
- 2027年前半 :教区における評価の集会
- 2027年後半 :全国集会と地域の司教協議会連盟や他のグループの評価の集会
- 2028年前半 :大陸別の評価の集会
- 2028年6月 :2028年10月の教会総会の作業文書の発行
- 2028年10月 :バチカンにおける教会総会の開催
すでに皆さんよく聴かれていると思いますが、このシノドスのプロセスには「霊における会話」という手法が重要な位置を占めています。ただ「霊における会話」のやり方にあまりにとらわれると、分かち合いをすることが目的化してしまう恐れがあります。「霊における会話」が上手にできたから、それでシノドス性を身につけられるわけではありません。大切なのは、共同体の交わりを深め、互いに耳を傾けることを優先し、耳にしたことを心で深め、一緒に祈り、一緒になって教会に対する聖霊の導きを識別することです。聖霊に導かれた交わりの共同体を生み出すことが、一番の目的であることを忘れないように致しましょう。
今後、様々な機会を通じて、2028年10月の教会総会へ向けての日本での歩みが提示されていくことになります。シノドスの道を歩むことはオプションではなく、今の教会の最優先事項ですので、どうぞ心に留め手積極的に取り組んでいただければと思います。
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