カテゴリー「国際カリタス」の5件の記事

2025年6月 8日 (日)

国際カリタス、南山大学から人間の尊厳賞受賞

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わたしの母校でもある名古屋のカトリック大学「南山大学」は、その教育のモットーを「Hominis Dignitati(人間の尊厳のために)」と定めています。このモットーは南山大学にとどまらず、南山学園全体のモットーでもあり、わたし自身も、名古屋の南山中学から始まって南山大学大学院を卒業するまで、一貫した南山教育を受けてきましたので、「人間の尊厳のために」を、心にたたき込まれてきました。

南山学園のホームページにはこう記されています。

「このモットーは学園創立20周年を機に制定され、当時南山大学教授であったドイツ人宣教師、アルベルト・ボルト師(第7代南山学園理事長)により、自身の経験と第2次世界大戦の痛みの中から、南山教育が掲げる最も大切な理念として生まれ、今日まで脈々と受け継いでいます。」

南山大学では、現在の学長であるロバート・キサラ神父が、大学の創立75周年にあたり、この建学の理念に立ち返るために、人間の尊厳賞を設立されました。キサラ学長は、ホームページのメッセージにこう記されています

「一私立大学のささやかな試みですが、営利組織ではできない、高等教育機関たる大学ならではの試みだと考えています。「人間の尊厳のために」という理念の実現に多大な貢献を果たしている人物、組織等を表彰することにより、本学の理念をあらためて広く社会に理解して頂き、学内外の人々とこれを共有したいと考えています」

このたび、第四回目の人間の尊厳賞の受賞者として、国際カリタスを選定していただきました。選定の理由には次のように記されています。

「カトリックの信仰に基づき、世界中の困難に対し各現場で的確な支援を継続的に実施出来る枠組みを展開」

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この名誉な賞を国際カリタスが受賞することになり、国際カリタスを代表してわたしが、6月7日午後に名古屋の南山大学で行われた表彰式に出席し、賞をいただいて参りました。また表彰式後には一時間ほどの時間をいただいて、国際カリタスの活動やカトリック教会の援助への考え方などについて、講演をさせていただきました。

本来こういった受賞に際しては、実務を担当する事務局長が出席することが通例なのですが、今回は、場所が日本であり、日本語での講演会ということで、わたしが出席することになりました。国際カリタスの連盟に属する162の国・地域のカリタスの皆さん、実際に現場で働いてくださる多くのボランティアの皆さん、またカリタスを様々形で支えてくださる多くの皆さんを代表して、受賞して参りました。当日いただいた記念の盾は、後日手元に届いてから写真を公開します。

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なお当日は、名古屋の教会関係者の方や、旧知の皆さん、中学高校の同級生をはじめ、高校時代の恩師まで来てくださり、懐かしい皆さんにお会いできたことにも感謝で一杯です。

国際カリタスの活動を高く評価し顕彰してくださった南山大学の関係者のみなさまに感謝申しあげるとともに、カリタスの活動を支えてくださる多くの方に感謝申し上げます。

以下、南山大学がYoutubeに掲載している当日の映像です。

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2025年5月29日 (木)

国際カリタス理事会@メキシコ

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ローマでの一連の行事が終わり、メキシコへ行って参りました。国際カリタスの理事会にあたる代表委員会のためです。

国際カリタスは世界を七つの地域に分けています。1:アフリカ、2:アジア、3:ヨーロッパ、4:ラテンアメリアとカリビアン、5:中東と北アフリカ、6:北アメリカ、7:オセアニア、となっていますが、その各地域から責任者(地域カリタス総裁)と地域代表が参加する年に二回開催される会議です。

通常は5月と11月にローマで三日間の会議を開催していますが、今年は聖年のためにローマでの会場確保が難しく、ラテンアメリカの地域の皆さんのお招きを受けて、メキシコシティでの開催となりました。

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国際カリタスは4年に一度開催される総会において、一定期間を定めた活動方針の枠組みや財務方針の枠組みを決定します。総会が最高決定機関です。その方針に基づいて、実際に運営するのが年に二回開催される代表委員会であり、さらに具体的な業務執行のために、総裁(わたし)と副総裁、総会計、聖座任命の二名の代表、代表委員会から選出された一名に、法務委員会委員長と事務局長を加えて、執行委員会を構成し、これが年に四回(そのうちに二回は代表会議に合わせ、二回はオンライン)。さらに総裁、副総裁、総会計、事務局長の四名で、毎月の打ち合わせをオンラインで行っています。このいわゆる役員の中でフルタイムで雇用されているのは、ローマに駐在する事務局長だけで(下の写真、右側がアリステル・ダットン事務局長)、後の役員はわたしも含め無報酬のボランティアです。現在の役員は、わたしも含めて2023年5月にローマで開催された総会で選出されており、現在4年の任期の半分まで来たところです。

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国際カリタスは、赤十字国際委員会(ICRC)に続く世界で二番目の規模を持つ民間災害救援NGOだと言われていますが、実際には世界で160を超える独立した地域カリタスの連盟組織体です。独立したというのは、連盟のメンバーになるためには、その地域を管轄する司教協議会などの認可が必要だからであり、それぞれの団体はその地域の司教たちの権威の下におかれています。国際カリタスの役割は、災害や緊急人道支援に当たってメンバーの活動や資金援助をコーディネートすることであったり、全体を代表して国連や諸国際会館の場で政策提言活動をしたり、世界的な規模でキャンペーン活動を行うことにあり、国際カリタス自体が巨額の資金を持ってプロジェクトを行っているわけではありません。

国際カリタスの憲章の冒頭にも、「国際カリタスに特に委ねられている務めは、ローマ教皇や司教たちの愛の司牧活動(慈善司牧活動)を支えることである」と記されていますが、特に教皇様の望まれる方針に従って、それを具体化する活動に全体として取り組むように調整をしています。

各地で活動するカリタス組織は、それぞれに歴史があり固有の名称があったりしますが、基本的にはそれぞれの国や地域のカリタスとしてのアイデンティティを明示し、国際カリタスの活動の一翼を担って活動を行っています。今現在も多くのメンバーが、ウクライナやガザで支援活動に取り組んでおり、またアフリカ各地でも様々な活動を行っています。さらには今年はの聖年に合わせて、「負債を希望に変えよう」というキャンペーンを行ったり、COP30に向けた啓発活動などを続けています。日本における活動は、カリタスジャパンが行っています。

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メキシコといえば、グアダルーペの聖母です。東京教区でもグアダルーペ宣教会の司祭が働いておられるので、その名前を耳にされたことはあろうかと思います。

メキシコシティには、そのグアダルーペの聖母の大聖堂があり、今回の代表委員会参加者全員でミサに与ることができました。ミサはメキシコシティの大司教カルロス・アグイアル・レテス枢機卿様が司式してくださり、カリタスからもわたしとオセアニアの責任者でトンガのマフィ枢機卿、中東北アフリカの責任者でジブチの引退司教であるベルティン司教、ラテンアメリカの責任者であるユカタン教区のロドリゲス大司教が共同司式しました。

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1531年12月9日にフアン・ディエゴに奇跡的に現れた聖母は、この地に聖母に捧げられた大聖堂を建設することを望まれ、地元の司教にそれを証明するために、フアン・ディエゴのまとっていたマントにその姿を映し出すという奇跡を行われました。そのマントは今でも大聖堂の祭壇の壁に掲げられており、祭壇裏手では間近に見ることもできます。ミサは平日の夕方に捧げられましたが、このときも大聖堂は大勢の巡礼者で一杯でした。

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ミサが終わり香部屋から退出すると、廊下で学生バンド((下)が待ち構えており、二曲を演奏し歌を披露してくださいました。聞くところでは、来年、演奏のために来日する予定があるとのことで、素晴らしい演奏でした。

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会議の会場は、メキシコシティの神学校の向かいにある、現地で創立された聖霊会という男子修道会の運営する黙想の家で行われました。広い庭のある会場でしたので、会議場での話し合いだけでなく、庭に出てのグループでの話し合いなども行われました。

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また黙想の家でのミサには、地元のシスターが中心になって結成しているグループが手伝いに来てくださり、ギターと様々な打楽器を駆使しながら、音楽を持って典礼を豊かにしてくださいました。特に、中央下あたりに写る男性が、様々な笛を駆使して、自然界の風の音などを再現しておられたのが強く印象に残っています。

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というわけで、ローマでの一連の行事が終わり、チケットの関係で一旦日本に戻り、東京のカテドラルで教皇レオ14世のためのミサを捧げ、そのままアエロメヒコの直行便で成田からメキシコへ飛びました。ローマの7時間の時差、メキシコの15時間の時差ですから、いま体の時間を元に戻すのに、一苦労しております。

 

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2024年5月17日 (金)

先週末から今日にかけて:カノッサ修道会、そして国際カリタス

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先週末の土曜日、11日の午後2時から、東京都世田谷区にあるカノッサ会の日本での本部修道院で、カノッサ会の創立者である聖マダレナ・カノッサの生誕250年を祝う感謝ミサを捧げました。カノッサ修道会のみなさん、おめでとうございます。

カノッサ会は東京ではこの本部修道院の隣接地で、マダレナ・カノッサ幼稚園を運営されていますが、国内で知られているのは福岡教区の大牟田市にある明光学園中学高校かと思います。日本での活動や修道会の歴史は修道会のホームページをご覧ください

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貧しい人のために尽くす人生に自らの使命を見いだした聖マダレナによって、1808年にイタリアで創立された修道女会です。スーダン出身で奴隷生活から脱してカノッサ修道女会の会員となった聖ジョゼッピーナ・バキタの存在もよく知られています。

わたしにとっては、司教になる以前に名古屋にいた当時、名古屋にカノッサ会の養成の家があり、しばしば青年たちの集まりなどで訪ねたことがありました。残念ながら、その後、この名古屋の養成の家は閉鎖となったそうです。

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当日は、本部修道院の聖堂に入りきれないほどの人が、東京だけでなく、全国から集まり、感謝ミサに参加してくださいました。近くにある赤堤教会の信徒の方もおいでになり、主任司祭のガブリ神父様が共同司式してくださいました。

カノッサ修道女会のみなさん、おめでとうございます。

そしてその晩の便で羽田を発ち、翌日曜日の午前中にローマにやってきました。国際カリタスのいくつかの会議に出席するためです。

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観光シーズンを迎えているローマでは、国際カリタスの本部があるトラステベレ地区あたりでホテルを見つけるのが至難の業になっており、今回は、参加者が30名ほどになることから、バチカンの裏手の丘を登っていったアウレリア通りにあるラサール会の総本部にある宿泊施設、Casa La Salleで、宿泊も会議も行うことになりました。

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今回の会議は、いわゆる年に二回ある理事会です。理事会は、代表委員会(Representative council)とよばれ、アジア、アフリカ、ヨーロッパなどなど、全部で七つある地域の代表者とそれぞれの地域のカリタスの総裁が集まります。国際カリタスの会議は、英語、スペイン語、フランス語の三つが公用語ですので、今回の会議にも同時通訳の設備が必要です。幸いこのラサール会の施設には会議室に同時通訳用のブースがあり、後はマイクなどの設備を国際カリタスの本部事務局から持ち込みました。この代表委員会には、アジアの代表の一人として、カリタスジャパンの秘書である瀬戸神父様も参加されています。年次の活動報告や予算、そして2023年の総会で決められた活動計画に沿った様々な活動についての報告などが議題です。この代表委員会は、水曜日一日と、本日木曜日の午前中です。

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本日木曜日の午前中は、シノドス事務局から次官のシスターナタリーにおいでいただき、シノドスについてのお話と、実際に参加者を5から6名のグループに分けて、霊における会話を実践しました。やはり実際にやってみなければわかりません。初めての人もいれば、すでに何回も実践した人もいます。

昨年10月にローマで行われた第一会期にも、様々な地域のカリタス関係者が見られました。第一会期の最終文書にも、貧しい人たちを主役として歩むシノドスの道の重要性が記されていますが、まさしくカリタスが世界各地の草の根で行っていることは、困難に直面する人たちに耳を傾けともに歩むことですから、カリタスはシノドスの歩みを実践してきたともいえます。

わたしはこの代表委員会に加えて、月曜、火曜、金曜と本日木曜の午後に行われた執行委員会(Executive Board)も出席です。というか総裁なので、その主宰です。事務局の全体を総括するのは事務局長で、彼は一年前の総会で、わたしと共に選挙で選ばれています。そして全体の会計も、選挙で選ばれました。選挙で選ばれた三名のうち、総裁と会計はこの委員会のメンバーです。この二人に、副総裁と法務委員会の委員長が加わり、さらに聖座が任命した二人と代表委員会が選出した一名で、執行委員会は構成されており、連盟全体を総括する役割(ガバナンス)を担っていて、事務局長は執行委員会に報告義務があります。その会議自体は、木曜日の午後でした。(下の写真は、理事会一日目の締めくくりにサンピエトロ大聖堂に移動し、向かって左側にある聖歌隊聖堂で捧げたミサ。司式する私の向かって左はトンガのマフィ枢機卿。右隣は引退されたばかりのジブチのベルティン司教。左端は瀬戸神父)

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月曜と火曜と金曜に何をしているかというと、国際カリタスの事務局に新しい三名を雇用するためのインタビューを行っています。事務局の総務を担当するCOOと、アドボカシーやプログラムを総括する総合的人間開発担当者、そして広報やキャンペーンの担当者。雇用を仲介する会社に入ってもらい、何百人もの候補者から、それぞれ3名まで絞ってもらいました。その途中では、わたし自身もこの会社からオンラインで聞き取りをされましたし、最後の三名に絞るための面談も、執行委員会の数名がオンラインで行いました。

その最終面談をこの一週間のうちに行い、来週には雇用する方を決定して、9月くらいから新しい体制で事務局を運営できるようにする計画です。

というわけで、土曜まで海外に出ていますので、書き始めたアドリミナの振り返りは、まだ一日目が終わっただけですが、続きは来週までお待ちください。

 

 

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2024年3月19日 (火)

教皇様にお会いしました

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3月13日、教皇フランシスコは、2013年に教皇に選出されて11年目の記念日を迎えられました。教皇として12年目に入られました。教皇に選出されたとき、すでに76才でしたし、前任のベネディクト16世が85才で退任されたこともあり、その時点では10年を超えて教皇職を務めるであろうとは、少なくとも私は考えていませんでした。

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ちょうどその2013年の5月に国際カリタスの理事会があり、その際に参加者と一緒に、新し教皇職を始められたばかりの教皇フランシスコにお会いする機会がありました(上の写真。真ん中は当時の国際カリタス総裁のマラディアガ枢機卿)。それから11年です。その間には、2019年に日本を訪問していただき、東京では先導役も務めさせていただきました。また先般のシノドスでは一ヶ月間、度々お会いすることもできました。なんとなく弱々しいけれど、しかし芯がしっかりとした、実は力強い教皇であると、お会いするたびに感じてきました。しかもどんなに困難な状況でもユーモアを忘れない教皇様です。

昨年2023年5月に、国際カリタスの総裁に選出されて以降、新しい事務局長共々、正式に教皇様に謁見をお願いしてこなかったので、このたび国際カリタスの活動報告を兼ねて謁見をお願いしていたところ、教皇儀典室から、3月14日の朝8時半に来るようにとの通達でした。数週間前の知らせでしたので、慌てて準備をし、その間に予定されていた東京教区の会議などはアンドレア補佐司教様にお任せして、3月12日から15日まで、ローマに滞在してきました。

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その間、現在のウクライナやガザ、そしてシリアでのカリタスの活動の件で、東方教会省のグジョロッティ枢機卿様とお会いして意見交換をしたり、総合人間開発省に報告をしたり、シノドス事務局でシスターナタリーとシノドスへのカリタスの関わりについて意見交換したり、事務局長のアリステル・ダットン氏と共に、三日間歩き回りました。バチカン周辺は聖年に向けてそこら中で道路工事が行われており、道路は大渋滞。タクシーやバスを使うより、歩いた方が早いのです。

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3月14日の朝8時前に、教皇宮殿に出向きました。いまや招待状がメール添付のPDFで来る時代です。スイス衛兵にスマホを見せながら、いくつかの関門を通過して、教皇様の執務室までたどり着きました。

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そこでの教皇様との話の内容はかけませんが、健康はいかがですかとのこちらの問いかけに、教皇様は力強く、でも小さな声で、「教皇職を続けるのに問題ない健康状態だと、医者のお墨付きをもらっている」とお答えでした。確かに昨年10月に比べても、少し齢を重ねたのが分かります。しかし頭脳は変わらず明晰。大きな移動は車椅子ですが、短い距離であれば杖をついて歩いておられます。

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4月の復活祭の後に、日本の司教団は全員で、アドリミナの訪問のためローマに行きます。そこで再会することをお伝えして、教皇宮殿を後にしました。教皇様にはお時間を取っていただいて、感謝です。

今年の秋のシノドス第二会期、そして今年末からの聖年などなどに加え、海外への司牧訪問も考えておられる様子です。全力を尽くして与えられた使命を果たそうとされている教皇様のためにお祈りをどうぞお願いいたします。

 

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2023年5月20日 (土)

国際カリタスの総裁に選出されました

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すでにお聞き及びのこととは思いますが、5月11日から16日までローマで開催されていた国際カリタスの総会で、総裁(会長)に選出されました。任期は今回の総会の終了時から次の総会、すなわち4年後の2027年の総会終了時までです。

ローマのコンフェレンスセンターで開催された国際カリタスの総会には、カリタスジャパンの二人(成井司教様、瀬戸神父様)を含め400人を超える代表が参加し、5月13日夕方、今年で二期8年の任期を満了したタグレ枢機卿の後任総裁(会長)を選出する選挙が、5人の候補者で行われました。

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またその前日、5月12日の夕方には、5人の候補者がそれぞれ10分の持ち時間で、総会参加者にスピーチをする時間もありました。

また5月15日には、二人の候補者から事務局長を選出する選挙が行われ、イギリス出身で現在はスコットランドのカリタスであるSCIAFの責任者を務めるAlistair Dutton氏(わたしの向かって右隣り)が同じく4年の任期で選出されました。また、新しい評議員会において副会長と会計の選挙も行われ、副会長にはこのポジションで初めての女性となるカリタスオーストラリアの責任者Kirsty Robertson氏(わたしの向かってすぐ左隣り)、会計にはカリタスヨーロッパの会計責任者でもあるベルギー出身のPatrick Debucquois氏(左端)が選出され、これから4年間の新しい指導部が決定しました。

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国際カリタスは世界各国・地域の司教協議会によって認められている「カリタス(愛)」の活動を行う団体による連盟組織です。国際社会では国際赤十字に次ぐ世界で第二の規模を持つ人道支援NGO組織と言われています。日本からは、司教協議会の委員会である「カリタスジャパン」が、国際カリタスの連盟に参加してきました。現時点では世界各地から160を超えるカリタスが連盟に参加し、教皇庁の総合人間開発省のもと、バチカンに本部事務局を置いています。

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四年に一度開催される総会では、連盟全体の活動計画や予算計画と共に、総裁(会長)、事務局長、会計が選出され、同時にその後4年間の役員会のメンバーも承認されます。毎年の会費を納入していないと選挙における投票権がありませんので、アフリカなどのいくつかの国が総会に参加したものの投票することができませんでした。それでも、わたしが選出された総裁選挙では、投票総数は143票でした。

なお、事務局長はローマ本部で有給の契約職員として常勤となりますが、総裁(会長)、副総裁と会計は無給の非常勤です。したがって、今回わたしは総裁(会長)に選出されましたが、ローマに引っ越すわけではなく、必要に応じてローマなどに出かけることになりますので、東京を離れるわけではありません。

事前に「司教の日記」にも書きましたが、わたしは本当に選出されるとは思っていませんでしたので、心の底から驚き、多少怖じ気づいています。なんといっても昨年11月、教皇様は国際カリタスの本部事務局の運営に問題があるとして、総裁であるタグレ枢機卿以下、当時の事務局長や評議員などすべてを解任し、外部のコンサルタントに一時運営を任せていました。その間、コンサルタントと、バチカンの担当部署である総合的人間開発省のチェルニー枢機卿などが、国際カリタスの規約を書き直し、教皇様がそれを認可したばかりです。ですから、この新しい指導部にとっては、ゼロからの立て直しがまず第一の務めとなります。そしてそれは、かなり困難を極めるものと思います。

総裁選挙は立候補制ではなく、連盟に加盟する団体からの推薦(ノミネート)を受けてカリタス内部の候補者委員会が審査し、その後、バチカンの国務省の審査を通過して初めて候補者と認定されます。わたしはカリタス台湾がノミネートしてくださったと伺いました。

事前の複数のソースからの情報では、ほかのある方が本命であると聞いていました。わたしもよく存じ上げている方でしたので、間違いがないと思っていました。ですからわたしは準備もそこそこに、総会が始まってから12日の朝にローマ到着。11日には教皇謁見もあったそうですので、結局教皇様には会わずじまいに。用意したスピーチも、10分と言われたところに5分分しかテキストを用意していなくて、ちょっと前振りをアドリブで入れて、それでも7分もかかりませんでした。ほかの方々は、持ち時間がカウントダウンされますので、後一秒のところまでギリギリお話しなさっておられました。

どういういきさつなのか、総裁選挙の投票は3回目の上位二名の決選投票までもつれ込み、最終的にわたしが選出されることになりましたが、その本命候補の方とわたしとの票差はたったの1票。つまりちょうど過半数の72票です。

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選出されてからが大変でした。予定では土曜に落選して、そのまま日曜には会場を離れて修道会の本部へ移り、二日ばかりローマの休日として帰国するつもりでした。ところが当選したため、日曜の午後には最初の評議員会があり、さらにその翌日までに、総裁は副総裁の候補者を指名して、月曜の評議員会で信任投票を行う規則になっているので、たった一日で、20人ほどの評議員から一人を選ばなくてはなりません。その晩から、様々な方面からのメール攻勢と、月曜朝にはなんと朝5時半に、朝食時に話したいので朝6時に食堂でとリクエストが来る始末。それから午後の評議員会まで、ああでもないこうでもないと思い巡らして、最終的に決めたのがオーストラリアのKirsty Robertson女史。国際カリタスには、これまで一期だけ女性の事務局長はいましたが、女性の副総裁は初めてとなりました。満場一致で評議員会では可決。

しかもその日には、たまたまですが、スマホに入れていた海外用のesimの調子が悪くなってあわててesimを買い直したり、PCのWIFIが不調になってアダプターの再インストールになったり、すさまじくパニック状態の一日となってしまいました。

事務局長は、以前からよく知っている人物で、かなり前に国際カリタスの本部事務局でも人道支援の責任者として働いていた方なので、彼が選ばれたことはわたしにとっては良かったと思います。ただイギリス人の事務局長とオーストラリア人の副総裁が、二人でやり合っている英語は、かなり理解が難しい・・・。

翌火曜日の午前中には、バチカンの広報へこのチーム4人で出かけていき、記者会見もありました。それぞれ少しづつ集まった20人ほどの記者の前で話しましたが、その後は個別インタビューとなり、ほとんど事務局長が引き受けて、見事に話しておられました。

カリタスは普遍教会の本質的な役割の一つである愛の業を率先して実行し、神の愛を目に見える形であかしする存在として、教会全体の福音宣教と存在そのものにとって大きな意味を持つ組織です。今回多くの加盟団体の支持をいただいて総裁(会長)に選出されましたので、教皇様の意向に従い、教会の愛の業を深めていくために、自分にできる限り力を尽くしたいと思います。

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東京教区の皆様には、わたしがまた役目を一つ増やしてしまいましたので、今後、予定の変更など大きな迷惑をおかけすることになるかと思います。大変申し訳ありません。宣教地の司教任命の担当者である福音宣教省のタグレ枢機卿様には、直接、東京教区に補佐司教を任命することを優先してほしいとお願いしましたが、こればかりは簡単にはいきません。もちろんわたしの第一の務めは東京の大司教ですので、その務めをおろそかにしないように全力を尽くします。

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